はじめに

塗装の主な目的には、基材の保護(防食性・防水性)、美観(意匠性・耐候性)などの機能性を付与することにあります。そのために、塗料には非常に多くの物質が含まれています。

しかし製品として社会に流通する責任として、単に機能性が十分であるだけではなく、安全性や持続可能性が求められます。
特に安全性は機能性の一部を犠牲にしてでも達成すべきという場面も多く、そのために含まれてはいけない、あるいは含まない方が望ましい、という物質が多数存在します。

時に法規制され、時に業界で自主規制し、あるいはなんだかんだ使用が続けられる。この記事では、そんな物質について取り上げていこうと思います。

特定の規格にかかわるものではないですが、様々な規格と横断的に絡む話も多くなります。

第1回は「塗料と〇〇フリー:屋内環境編」として、人の住環境を主眼に置いた物質ベースの記事となります。今後、「作業環境編」「自然環境編」と続く予定です。

※当サイトの方針として事実ベースを心掛け、引用やリンクが多くなります。そのためやや読みにくいかもしれませんので、興味があるところだけ読んでいただくのが良いかもしれません。

ホルムアルデヒド

なぜ配合されるのか

「塗料にはホルムアルデヒドの添加が規制されています」というとそれっぽく聞こえますが、実はもう少し複雑です。
 そもそも、だれも好んで配合などしません。樹脂の特性上、あるいは硬化の機構上、仕方なく出てしまうものです。

 そのため、
 「この塗料にはホルムアルデヒド無添加(ホルムアルデヒドフリー)です」
 というのはやや弱く、
 「この塗料や硬化物はホルムアルデヒドを放散しません」
 というのが重要です。

主な規制・基準など

主に4つの基準があります。

1.国土交通省 建築基準法によるシックハウス対策
 ホルムアルデヒドの放散の程度によって、建材や塗料についての使用制限があります。
 これについては、塗料の規格について③-F☆☆☆☆-という記事でも解説していますので詳細は省きますが、規準に満たないものは内装など特定の部分において使用が禁止されるという強力な規制です。
 建築基準法で制限されているものには、ホルムアルデヒドのほか、アスベストや、後述するクロルピリホスなどがありますが、含まれるかでなく放散するかどうかという基準は、ホルムアルデヒド規制特有のものです。

2.厚生労働省「室内濃度指針値」
 これは「原則として全ての室内空間を対象」とする指針であり、生活環境や居住環境に限らず、非常に広範に適用されるものです。
 ホルムアルデヒドを含む13物質(群)とTVOC(後述)について、室内の濃度が定められており、これは放散でなく最終的な濃度としての指針です。
 なお、この「室内濃度指針値」は本記事で今後たびたび出てきます。

3.文部科学省「学校環境衛生基準」(学校保健安全法、学校教育法)
学校環境衛生基準においては、目的を児童生徒等及び職員の健康保護を目的とし、教室内の換気・採光・照明・保温といった室内環境に加え、飲料水や水泳プール、施設全体の清潔など、学校における環境衛生を総合的に維持管理するために望ましい基準が規定されています。
 厚生労働省「室内濃度指針値」と同じく、濃度が定められており、ホルムアルデヒドについては「室内濃度指針値」と同じ基準値(100μg/㎥)が採用されています。

4.日本塗料工業会 「健康リスクに対する建築用塗料の目標基準(暫定値)(平成9年4月)」
 日本塗料工業会の定めた目標基準(暫定値)では、エマルジョン塗料に対してアルデヒド類を0.01%以下と規定しています。
 出典とみられる日本塗料工業会「塗装設計・施工マニュアル」第2版」の販売やネット上での閲覧を確認できなかったため、文部科学省の文書から下記引用します。

https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2015/10/19/1255334_003.pdf より引用

原文にあたっておらず詳細な目的や適用範囲、また現在(令和7年)時点で「暫定値」なのかなどは判断できませんでしたが、複数の室内用塗料の製品カタログに基準として記載されており、また、旭川市公共建築物室内空気汚染対策指針(令和6年)などでも指定されているなど、現在も有効と考えるべきでしょう。

深堀り

上にあげた規制のうち、は塗料製品にかかる規制(基準)ではありません。
また、室内用塗料は実質的にほぼすべてF☆☆☆☆認証(または性能相当による自主表示)となっており、規制としてはのみで十分という見方もできます。

しかし、のような基準があることで、塗料からの放散のみならず、例えば「ホルムアルデヒドを吸着・分解する塗料」という機能性塗料が求められる根拠になるため、塗料もあながち無関係とは言い難い部分があります。

VOC(TVOC、4VOC)

なぜ配合されるのか

VOCの定義については、いくつかの範囲があります。
塗料と溶剤で詳しく触れていますので、そちらを一読ください。

配合の目的ですが、(弱)溶剤系塗料であれば、ほとんどの場合溶媒そのものがVOCとなり希釈剤(シンナー)もVOCとなります。

また水性塗料においても、主に樹脂エマルションその他の各種添加剤の製造時の副生成物や、安定化のために添加などにより塗料液に含まれ、あるいは生膜助剤として直接的に配合されます。

またホルムアルデヒドと同様、直接的にVOCを含まない塗料でも、硬化反応時にVOCを発生させる場合があるため、フリー(意図的含有なし)であるからと言って完全に排除できるとは限りません。

主な規制・基準など

塗料と溶剤の記事に詳細がありますが、VOC(揮発性有機化合物)大気汚染防止法に定められたものであり、その目的は光化学スモッグ対策であり、人体への影響の程度では定義されていません。
そのため、塗料液に含まれるVOCや、屋内環境(雰囲気)のVOCは、大気汚染防止法とは違う概念が用いられ、その規制や基準ごとに異なります。

屋内環境におけるVOCについては、主に3つの基準があります。

1.厚生労働省「室内濃度指針値」
これは「原則として全ての室内空間を対象」とする指針であり、生活環境や居住環境に限らず、非常に広範に適用されるものです。

ここでは総揮発性有機化合物(Total Volatile Organic Compounds: TVOC)という概念が示されており、TVOC の暫定目標値として 400 μg/㎥とされています。その定義は、
ガスクロマトグラフを用いた分析により、
n-ヘキサンからn-ヘキサデカンまでの部分に見つけられる化合物
となっています。そこに含まれる必須VOCsや、詳細な分析方法はリンク先を確認いただければと思いますが、実質的には沸点基準に近いといえるでしょう。

文部科学省「学校環境衛生基準」(学校保健安全法、学校教育法)
学校環境衛生基準においては、前項、厚生労働省の指針を参考とし、独自に定義、検査方法基準を設定しています。

揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)は、蒸発しやすく(揮発性)、大気中で気体となる有機化合物の総称としていますが、
基準や測定はホルムアルデヒドを含む6物質について定め、その基準値は厚生労働省と同値が採用されています。

引用元:https://www.mext.go.jp/content/20230817-mext_kenshoku-100000613_2.pdf

また、「揮発性有機化合物の発生源となる可能性があるもの」という表も下記の通り示しており、学校空間を想定した実務的な観点に立った基準となっています。

引用元:https://www.mext.go.jp/content/20230817-mext_kenshoku-100000613_2.pdf

この表で塗料についてみてみると、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレンとなっており、これは4VOC(後述)といわれるものです。

3.日本塗料工業会 「健康リスクに対する建築用塗料の目標基準(暫定値)(平成9年4月)」
 日本塗料工業会の定めた目標基準(暫定値)では、エマルション塗料について、
TVOC 1%以下
芳香族系溶剤類0.1%以下
アルデヒド類を0.01%以下
と規定しています。
 ホルムアルデヒドの項にも書きましたが完全な出典を確認できていないため、TVOCの厳密な定義や、芳香族系溶剤類の範囲については不明ですが、これは室内濃度などでなく塗料設計の指針であるため、設計者であれば「どちらかわからない微妙なもの」を念のため排除することで、マージンを取ることが可能です。

深堀り

TVOCの定義

上にあげた規制(基準)のうち、直接的に塗料製品にかかるものは3のみです。

3のVOC定義は不明としましたが、想定としては、日本塗料工業会の他の資料ではVOCについて沸点範囲で定めていますので、おそらくTVOCもこれに準じるものと考えられます。
https://www.toryo.or.jp/jp/anzen/VOC/files/VOC-gl2013.pdf
本ガイドラインで対象とするVOCは塗料が対象であるため、世界保健機構(WHO)のVOC分類に基づく「沸点範囲(常圧;50-100℃~240-260℃)の揮発性有機化合物とする。

しかし、厚生労働省のTVOC定義(n-ヘキサン~n-ヘキサデカン)では、沸点は70~285℃程度となり沸点範囲がかなり異なります。

つまり、水性塗料に沸点260~285℃程度の溶剤を使用することで、
「塗料としてはTVOCを含まない」
「作業中の空間でTVOCが検出される」

ということが起こったり、逆に沸点50~70℃程度の溶剤を使用することで、
「塗料としてはTVOCを含む設計」
「作業中の空間でTVOCが検出されない」

と言うことが起こりえます。


4VOC

「学校環境衛生基準」で触れた4VOCについての補足解説です。

4VOCとは、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレンの事です。

この概念は、
日本建材・住宅設備産業協会
日本接着剤工業会
日本繊維板工業会
等、建材系業界団体における自主表示基準で使われています。

一般的に、塗料についてこの定義が使われることはないかと思います。
理由については想像となりますが、
・日本塗料工業会の芳香族系溶剤類0.1%以下という目安があること
・水系塗料ではこの周辺物質も含め全く添加しないことも可能であること
・塗料は比較的原料成分のトレーサビリティが容易であり、 さらに建材における塗料は質量としてもわずかであるため、 4VOCが全く予期せず放散されることも考えづらいこと
などの理由が考えられます。

フタル酸エステル

なぜ配合されるのか

プラスチック、PVCへ柔軟性を持たせるための添加剤として使用され、
塗料においても塗膜に柔軟性を持たせるため、あるいは水系塗料の生膜助剤として添加されるものです。

ただし、ここ20年(2005年以降)を通じて、建築用塗料の大半、食品や玩具関連、輸出する製品からはかなり廃されており、
材料としてはまだ一般的であるものの、使用される分野はかなり狭くなり、塩ビ系プリントや、塩ビ系の工業用塗料、限られた用途のラッカー等に使用されています。

フタル酸エステルは、生殖毒性および内分泌かく乱作用、いわゆる環境ホルモンとしての忌避となります。 

主な規制・基準など

産業用塗料全体としては、REACH規則RoHS指令食品衛生法なども関連してくるのですが、屋内環境と言う観点から見ると、厚生労働省「室内濃度指針値」が根拠となります。
 これは「原則として全ての室内空間を対象」とする指針であり、生活環境や居住環境に限らず、非常に広範に適用されるものです。
 フタル酸ジ-n-ブチル(DBP)
 フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP、DOP)

について、室内の濃度が定められています。

深堀り

フタル酸エステル類とは?

「フタル酸とアルコールがエステル結合したもの」

というように説明されることが一般的ですが、これはやや不十分です。

フタル酸樹脂エナメルその他の、いわゆる油性塗料、アルキド樹脂系塗料も、まさに
「無水フタル酸とアルコールを反応させてエステル結合させたもの」です。
しかし、実際の規制対象としてのフタル酸エステルフタル酸樹脂は含まれません。

ここを区別するため、

「フタル酸と"一価"アルコールがエステル結合したもの」

と言うのがより正確かと思います。

その他のフタル酸エステル

そのほかの代表的なフタル酸エステル、例えば
・フタル酸ブチルベンジル(BBP)
・フタル酸ジイソブチル(DIBP)
については、「室内濃度指針値」では指定されていないため、建材塗料への使用が不可ということはないのですが、現実的にREACH規則RoHS指令食品衛生法において規制されており、全般としてフタル酸フリーへの代替も進んでいるため、わざわざ添加することは一般的でないと考えられます。

フタル酸(エステル)フリーとは

実際は、塗料そのものをフタル酸フリーと言うことはあまり多くなく、
添加剤としての可塑剤そのものがフタル酸フリーといういい方をします。
フタル酸フリーの可塑剤としては、DOTP等のテレフタル酸系可塑剤などがあります。

そうです、テレフタル酸ジオクチル非フタル酸という分類になります。

フタル酸樹脂もそうですが、
規制を一般的に「フタル酸(エステル)類」と略しているせいで、
名称としても構造としても、各種規制や有害性について調べないと、
該当するかどうかがわかりにくくなっています。

「フッ素」「アルコール」「シリコーン」など、毒性や規制の範囲はそのごく一部であるのに、フリーをうたう名称範囲だけが大きすぎるというのは、よく見る話ではありますが……

参考資料

フタル酸エステルについては、下記の資料が非常に包括的で情報が集約されています。
もっと深く知りたい方は、一読を推奨いたします。

NITE(製品評価技術研究機構)
フタル酸エステル類
https://www.nite.go.jp/data/000010054.pdf

ビスフェノールA(BPA)

なぜ配合されるのか

ビスフェノールA(BPA)は、塗料においては非常に一般的なエポキシ樹脂の主原料です。
エポキシ樹脂塗料の特性、防水、防錆、付着性、硬度などを求める場合、基本的に使用されています。
BPAを使わないエポキシ樹脂も存在しますが、上記物性を備えるかどうかの他、コスト、性能、実績その他の要因により用途が限定され、代替は難しい分野が多いです。
そのため、現在でも塗料では下塗り材、防食、塗り床材など、非常に多くの場面で使用されています。

なお、硬化した塗膜として見た場合、理想的に反応すれば、
BPAは全て反応済みであり、塗膜内に含まれないと言えます。
ただし現実的には100%の反応ということはあり得ないため、
エポキシ樹脂内にわずかに残っているのが一般的です。

主な規制・基準など

ビスフェノールAの有害性は内分泌攪乱作用、つまり環境ホルモン作用ですが、これは固体であるため、例えば構造物の防食や、コンクリートの床塗り材として使用され塗膜内に残存していたとしても、それが口に入ることなどは通常ありません。

そのため、規制はすべて「浸出の規制」となりますが、当然床や壁から溶出することはなく、具体的には水道管からの浸出が問題となります。

根拠法は水道法であり、
水道施設の技術的基準を定める省令
資機材等の材質に関する試験
において、試験によって得た浸出液について
フェノール類 フェノールの量に換算して、〇・〇〇〇五mg/l以下であること。
が求められています。

また同様に、日本水道協会規格
JWWA K 135 水道用液状エポキシ樹脂塗料塗装方法
JWWA K 143 水道用コンクリート水槽内面エポキシ樹脂塗料

等の試験規格に、同等の基準が適用されています。

参考 日本水道協会規格の変遷(第3版) (2018年 公益社団法人 日本水道協会)

深堀り

そのほか、一般的に塗料として入手することはありませんが、工業用塗料として、食品に触れるエポキシ樹脂があります。食品缶詰を錆びさせないための内面コートです。

これは直接食品に触れ口に入るものであるため、食品衛生法において使用そのものは許可されているものの、容器としての溶出試験規格を2.5μg/ml(2.5ppm)と規定されています。

消費者庁 ビスフェノールAについてのQ&A

さらに、この消費者庁の資料の末尾に
国内で製造される缶詰容器については、ビスフェノールAの溶出濃度が飲料缶で0.005ppm以下、食品缶で0.01ppm以下となるように、関係事業者によって自主的な取り組みがなされてきており、2008年7月には業界としてのガイドラインが制定されています。
とある通り、日本缶詰びん詰レトルト食品協会などによる業界自主基準はそれよりはるかに厳しい数値を採用しています。

一般的に「缶詰を直接熱してはいけない」と言われるのは、
高温の方がビスフェノールAの溶出が懸念されるためです。

ビスフェノールAについては、根拠が食品衛生法であることから、
上記の消費者庁のほか、厚生労働省などからも、
一般消費者向けの分かりやすい情報がまとまって出ています。

厚生労働省 ビスフェノールAについてのQ&A

イソチアゾリン

なぜ配合されるのか

イソチアゾリンは、水系塗料において主に塗料液の腐敗を防止するための防腐剤として用いられます。
物質によっては成膜後の防カビ性能を目的とするものもありますが、
一般的なMIT、BITなどは成膜後の防カビ性能よりも、
塗料保存中の微生物増殖抑制が主目的です。

具体的には、下記のような物質群です

主に塗料液の防腐目的
1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン (BIT)
・2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン (MIT)
・5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン (CIT、CMIT)

N−n−ブチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン (BBIT)
主に成膜後の防カビ・防藻目的
・2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン (OIT)
・4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン (DCOIT)

主な規制・基準など

その主な有害性は皮膚感作性であり、いわゆるアレルゲンです。
(環境有害性もありますが、やや話がそれますのでSDS等をご確認ください)

現時点ではEU主導で化粧品やそのほかへの使用制限であり、
国内で塗料としての禁止などの規制はありません。
ただし化学物質として安衛法や化審法、化管法(PRTR)による制限は存在し、
また有害であることは周知であることから、
一部ではイソチアゾリンフリーの防腐剤が販売されています。

深堀り

イソチアゾリン系防腐剤は、非常に強力な防腐・防カビ剤であり、
成膜後の防カビ性能のみであればピリチオン系やイミダゾール系など代替品が多く存在するものの、
塗料液の防腐剤としては、同等性能を単剤で満たす代替はほぼなく、
保存性(腐らない)と安全性(かぶれない)のトレードオフとなっているのが現状のようです。

実際に、大手添加剤メーカーであるBYKなどがEU規制を受けてどのような対応をとったかと言えば、
「複数のイソチアゾリン系をブレンドし、それぞれの濃度を規制の表示義務基準値(15ppmなど)未満に抑える」
という、法規制クリアを最優先した現実的な対応となっています。
MIT 分類に含まれない BYK の添加剤

クロルピリホス

なぜ配合されるのか

クロルピリホスは、有機リン系殺虫剤であり、
かつてはシロアリ駆除剤として建材への塗布や床下への散布という形で木材等に使用されていました。

しかし、記者の調べた範囲において、
防虫目的で塗料に配合されていたという事実は見つかりませんでした

主な規制・基準など

その主な有害性は神経系への毒性であり、特に乳幼児の発達神経毒性や遺伝毒性、生殖毒性が疑われています。
主な規制は下記の2つです。

1.国土交通省 建築基準法によるシックハウス対策
 建築基準法では、ホルムアルデヒドのような放散量ではなく、完全な使用制限となっています。
(居室を有する建築物の建築材料についてのクロルピリホスに関する技術的基準)
第二十条の六 建築材料についてのクロルピリホスに関する法第二十八条の二第三号の政令で定める技術的基準は、次のとおりとする。
一 建築材料にクロルピリホスを添加しないこと。
二 クロルピリホスをあらかじめ添加した建築材料(添加したときから長期間経過していることその他の理由によりクロルピリホスを発散させるおそれがないものとして国土交通大臣が定めたものを除く。)を使用しないこと。

2.厚生労働省「室内濃度指針値」
 これは「原則として全ての室内空間を対象」とする指針であり、生活環境や居住環境に限らず、非常に広範に適用されるものです。
 建築基準法で完全に規制済みであることから、それ以前に使用された建物等の放散を想定しているのか、
 1μg/㎥(0.07ppb) 但 し小児の 場合は0.1μg/㎥(0.007ppb)
 という、非常に厳しい水準での室内濃度を設定しています。

深堀り

「室内濃度指針一覧」という記載でなく「クロルピリホスフリー(不含有)」という塗料が複数存在するようです。
主に木部用ですが、それ以外にも屋内用の製品などで、
クロルピリホスが含まれないことをPRしているカタログがあります。

しかし、前項に記載した通り、クロルピリホスは元々塗料配合として一般的でなかった可能性があります。
塗料で使われてきた歴史がないのであれば、その不含有を敢えてPRすることは、
そのPRをしない製品へのネガティブな印象になります。

ここからは記者の私見となりますが、こういった表示は、どこか一社が始めると、
ネガティブな印象を避けるため他社も追従する必要があり、
メーカーにとっても本来不要な負担ということになります。

もし添加されてきた歴史がないのであれば、そのような表示は避けた方がよいのではないかと思う次第です。

おわりに

今回は「〇〇フリー 屋内環境編」というテーマでしたが、
塗料には様々な化学物質が使用され、毒性も、規制の形も、
また国や業界の対応も様々で、なかなか物質ごとの整理は困難で、
ややとりとめのない形になってしまいました。
次回、「〇〇フリー 作業環境編」へと続きます。

免責事項

この記事は記者の調査または経験に基づき、その内容には正確を期しておりますが、
情報として判断を行う場合は、必ずリンクした各法令及び信頼できるソースを確認してください。
また、「木材用塗料にクロルピリホス配合されてたよ」「これ規制されてるよ」といったことがあれば、
お気軽にお問い合わせフォームからご指摘ください。