はじめに
表題の通り
規格が存在するのに、該当する製品がない
ということがあります。
当サイト作成にあたっても、「この規格塗料は探しても存在しないんじゃないか」という場面は少なくありません。
本記事では、規格のみが存在するように見える塗料について、その主な理由を考察していきます。
理由1:規格そのものが「廃止」されたケース
最も単純な理由の一つは、規格そのものがすでに廃止されている場合です。これは統合や移行による消滅も含みます。
特にJIS規格は廃止と現行が公告により明確です。廃止されているかはJISC(日本産業標準調査会)のウェブサイトで検索可能です。
https://www.jisc.go.jp/app/jis/general/GnrDisuseStandardSearch.html
塗料については、「K54」「K55」「K56」で検索してみましょう。これで廃止されたJIS規格の一覧を確認できます。(少ないですがK59やA69の一部等もあり)
廃止された規格に該当する塗料は当然存在しません。しかし、古いカタログには当然載っていますし、一部メーカーのウェブサイト上では今でも記述が残っていたりします。
また自衛隊規格などは更新が頻繁でないようです。そのため、すでに廃止された規格やその試験項目を引用していたりします。
とはいえ、基本的には(※)その規格書の最新版を見れば現行かどうかはわかります。製品が見つからない理由としては明確であり、わかりやすい理由と言えます。
※JISはハンドブックに所収されていなくても規格表が生きている場合が多くあり、先のサイトやJSAなどで確認が必要。
理由2:実質的な廃止規格
これは2つのパターンがあり、
1.現行JIS規格であるものの、業界認識として廃止されているケース
2.廃止を明言されず、現行か廃止か区別が付かないケース
いずれも、状況的証拠から判断するしかないのが難しい所です。
1. JIS規格で現行であるものの、業界認識として廃止されているケース
大臣公告で廃止されていない場合、JIS規格としては現行です。
しかし、実質的に廃止扱いされている規格がいくつかあるようです。
主な該当規格例
・JIS K 5511 油性調合ペイント
日本塗料検査協会 日塗検ニュース No.135(2014) にて、現在(=2014年)は廃止と記載
日本塗料工業会 ホルムアルデヒド自主表示要綱(2025) にて、但し、JIS K 5511、JIS K 5562、JIS K 5591、JIS K 5667、JIS K 5961、JIS K 5962は廃止規格となっている。と記載あり
・JIS K 5562 フタル酸樹脂ワニス
日本塗料検査協会 日塗検ニュース No.135(2014) にて、現在(=2014年)は廃止と記載
日本塗料工業会 ホルムアルデヒド自主表示要綱(2025) にて、但し、JIS K 5511、JIS K 5562、JIS K 5591、JIS K 5667、JIS K 5961、JIS K 5962は廃止規格となっている。と記載あり
・JIS K 5591 油性系下地塗料
日本塗料検査協会 日塗検ニュース No.135(2014) にて、現在(=2014年)は廃止と記載
大日本塗料 平成22年版「公共建築工事標準仕様書」の内容と当社の取り組み にて、廃止と記載(平成22年=2010年)
日本塗料工業会 ホルムアルデヒド自主表示要綱(2025) にて、但し、JIS K 5511、JIS K 5562、JIS K 5591、JIS K 5667、JIS K 5961、JIS K 5962は廃止規格となっている。と記載あり
その他の例
・JIS K 5667 多彩模様塗料
・JIS K 5961 家庭用屋内木床塗料
・JIS K 5962 家庭用木部金属部塗料
日本塗料工業会 ホルムアルデヒド自主表示要綱(2025) にて、但し、JIS K 5511、JIS K 5562、JIS K 5591、JIS K 5667、JIS K 5961、JIS K 5962は廃止規格となっている。と記載あり
これらはJIS規格そのものは現行であるものの、どうやら業界認識的には廃止扱いになっているようです。そのため、製品を探しても見つからない場合がほとんどです。
この他にも、同じような状況の規格があるかもしれません。
2. 廃止を明言されないケース
規格集全体が更新されるタイプであれば、最新版に掲載されていなければ廃止規格と考えることができます。また、JIS規格は廃止や現行が明確であり判断可能です。
ただし、全体が更新されない、例えばJPMS規格などは判断が難しいです。業界紙などを常に追っていないと、現行であるか廃止であるかを後から把握することはやや困難です。
JPMSについては、
日本塗料工業会 出版物リスト
にあるものは現行と言えそうですが、
JIS K 5670の土台となったJPMS-24 アクリル樹脂系非水分散形塗料
→記載なし
JIS K 5551水系規格追加時の土台となったJPMS-30 鋼構造物用水性さび止めペイント
→記載あり
など、なかなか基準がわからない部分も残ります。
理由3:性能的な「相当品」はあるが、規格認証のメリットが少ないケース
規格の定義や品質を満たす製品は市場に存在するものの、メーカーが認証取得していないケースです。
製品需要そのものが少ない場合
規格の用途がニッチである、あるいは市場規模が小さい場合などです。
この場合、JISマークを付けるメリットが認証コストに見合わないとメーカーが判断するものと思われます。
製品はあるが規格需要が少ない場合
品質そのものの需要はある一方、規格品であることを重視されない場合です。典型的には有力な塗装仕様に入っていない場合など、性能さえ証明できれば、わざわざ認証コストをかける必要がなくなります。
JIS認証には、製品試験の手間、工場管理の体制構築、認証維持のためのコストなど、それなりの費用と労力がかかります。そのため、メーカーがあえて規格取得をしないことがあります。
あるいは、過去に規格を取得していたが、現在ではしていない、ということもままあります。
これらは各メーカー内部による判断なので、外からは伺い知れません。
本当にないのか、実はあるのか、
理由4:規格が「先行」しているケース
技術開発の動向や国際規格との整合性を考慮し、未来の製品を見据えて規格が先に作られたものの、市場の追随が遅れているケースです。
理由5:存在するが、カタログやウェブサイトに掲載していないケース
最初に書いたように、探しきれていないだけというパターンです。
基本的にメーカーは売上を上げるために規格認証を取得します。そのため取得品はある程度公開される傾向にあります。しかし、ウェブサイトなどには掲載していない型番も案外多いものです。
当サイトでも紙カタログなども情報ソースとしてある程度は記載していますが、おそらく漏れもあるでしょう。
考えられる理由としては、
需要先が限られており、すでにその業界では十分に知名度がある場合
公開しても売り上げは増えず、更新や問合せコストがかかります。
特定の大口顧客専用品やそれに準じる製品で取得している場合
一般に製品名を公開しないため、取得しても表に出ません。
責任施工専用品である場合
塗料単体での販売をしないため、取得しても表に出ません。
OEM品である場合
当然、取得したメーカー(OEM供給元)は製品名を公開しません。
とはいえ、OEM供給先は規格取得品であることを公開するのが一般的です。なお、認証番号を確認すると、製造元の工場住所が出てきたりします。
売る気がない場合
廃盤予定、JIS認証返上予定、自社新製品との競合で旧製品を宣伝したくないなど営業戦略上の理由。
等が想定されます。
まとめ
製品が見つからない主な理由を考察してみました。
- 規格そのものが「廃止」されたケース: (JISなど公的な情報で確認可能)
- 実質的な廃止規格: (JISは現行だが、業界慣行として廃止扱いされているケース、または現行・廃止の区別が不明瞭なケース)
- 性能的な「相当品」はあるが、規格認証のメリットが少ないケース: (コストに見合わず、メーカーが自主的に規格取得をしていない)
- 規格が「先行」しているケース: (技術開発の遅れや、市場の需要が追い付いていない)
- 存在するが、カタログやウェブサイトに掲載していないケース: (特注品、販売戦略、流通ルートの限定など)
このなかでも理由5は、メーカーの内部的な判断により、外部から確認することは困難です。製品の有無を確認する手段は、その分野に詳しい販売店に直接問い合わせる、くらいでしょうか。販売店やその担当者にも得意分野があり、場合によってはその販売店で取り扱いのない商品にまで詳しい方もいたりします。
あるいは、このようなやり方も考えられます。
もし、当サイト非掲載の有力情報がありましたら、お寄せいただけると、運営者が喜びます。とても喜びます。よろしくお願いいたします。
最後に:どうしても見つからない場合
実際の所、製品を探す場合の最終的な解決策は「詳しくて、かつ親切な人」に聞くしかありません。
今はほぼ使われない過去の規格など、メーカーの営業担当者でも調べずに即答できる人は少ないでしょう。これは「相当品はありますか?」という聞き方をしたところで同じです。
しかも、そうして見つかる可能性があるのは「存在する製品」のみです。
「存在しないこと」を確認できるのは、理由1や2(廃止規格)に該当する場合くらいなものです。
では、もし「この規格の製品を探したが、どうしても見つからない」という立場の場合、どうすればいいか。
存在しないことを前提に、指定の方を疑う。
製品ではなく、規格(設計図書)の方を調べましょう。
「昔は存在したのか?」「最近の資料でも使われている規格なのか?」「あるいはシンプルに書き間違い・打ち間違いではないか?」
大元の指定自体が現状に即していない可能性があります。
存在しないことを前提に、似たものを探す。
探している規格の「種別」や「適用範囲」のみを取り出し、それに合致する現行製品を探し、顧客の了承を得ましょう。
最善ではありませんが、次善の策です。
なお、これはあくまで「あらゆる手を尽くしたが、どうしても見つからない」場合の案ですので、ご承知おきください。
免責事項
この記事は記者の調査または経験に基づき、その内容には正確を期しておりますが、
購入や採用などの判断を行う場合は、必ず各規格書及び塗装仕様書の原本を確認し、必要に応じてメーカーに確認してください。
また、「ここ間違ってるよ」「他にもこういう場合があるよ」といったことがあれば、
お気軽にお問い合わせフォームからご指摘ください。
公開日 2025/11/18
最終更新2025/11/22
