
JIS K 5970 建物用床塗料
概要
JIS K 5970は「建物用床塗料」についてのJIS規格で、建物の屋内床面に塗装する塗料についての規定です。
2026年1月時点の最新はJIS K 5970:2003であり、詳細な規格の内容は下記をご確認ください。
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種類
JIS K 5970には、下記のような種類があります
| 種類 | 主な用途 |
|---|---|
| 上塗り | 上塗りまたは1回塗りで仕上げに用いる |
| 下塗り・中塗り | 下塗り及び/又は中塗りに用いる |
品質項目としては、
・容器の中の状態
・塗装作業性
・塗膜の外観
・上塗り適合性(下塗り・中塗りのみ)
・耐摩耗性(上塗りのみ)
・耐衝撃性(上塗りのみ)
・耐水性
・耐アルカリ性
・ホルムアルデヒド放散等級
となっています。
床用塗料として特徴的なのは、耐摩耗性でしょう。
これはJIS K 5600-5-9 耐摩耗性(摩耗輪法)による試験で、
作成した試験片に、摩耗輪と言われるタイヤ様のパーツを乗せ、
定められた荷重をかけ、また定められた速度と回数で回転させたのち、
試験片がどれくらい削れたか(重量が減ったか)を判定するものです。

文字だとわかりにくいので、イラストとしました。
AI生成なので一部不正確ですが、イメージは伝わるかと思います。
輪によって大きく削られれている右側の試験体の方が減量が激しく、
耐摩耗性が低いということになります。
また、「容器の中の状態」も少し珍しく、塗料の性状によって判定が異なります。
| 容器の中での状態 | |
|---|---|
| 液体塗料 | かき混ぜたとき,堅い塊がなく一様である。 |
| ペースト塗料 | 塊がなく一様である。 |
| 固形分が分離しやすい塗料 | 練り混ぜたとき一様になる。 |
試験方法はJIS K 5600-1-1の4.1.2のそれぞれa,b,cが適用され、
a) 液状塗料の場合
b) ペースト状塗料の場合
c) 固形分が分離しやすい塗料の場合
となっています。
壁用/屋根用塗料などの多くのJIS規格試験ではa)が指定されていますが、
床用塗料ではペースト状の厚塗り(流し延べ・流しのべ)塗料が存在するため、このように3種とも指定されているものかと思います。
また床用塗料に特有ということではないですが、耐衝撃性なども床用塗料の重要な性能です。
主な製品
JIS K 5970 に該当する主な製品は下記の通りです。
※ 主に適合品を記載していますが、一部相当品などが含まれる場合があります。個別ページ及びメーカー情報を必ずご確認下さい。
当サイトの調査で見つかったメーカー、上記の3社のみでした。
認証機関を見ると他にもJIS K 5970認証製造所が数社あるのですが、
OEM製造で、販売は上記に含まれているようです。
床用塗料を製造している塗料メーカーはこの他にも多くありますが、
JIS K 5970認証取得まではしていないメーカーが多数のようです。
塗装仕様・必要とされる場面
主要な塗装仕様書
建築工事標準仕様書 JASS18
公共建築工事標準仕様書(建築工事編)
などにおいて、JIS K 5970は記載されていません。
では、特に必要とされる場面はないのか?
というと、そんなことはなく、公共工事の仕様で指定されている場合があります。
その根拠を追っていくと、公共建築工事標準仕様書(建築工事編)や公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)にて記載が見つかりました。
先ほど記載がないと書いたばかりなのに、
記載が見つかったというのはどういうことかというと……
公共建築工事標準仕様書(建築工事編)平成28年版 :記載あり
公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)平成28年版 :記載あり
公共建築工事標準仕様書(建築工事編)平成31年版 :記載あり
公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)平成31年版 :記載あり
公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和4年版 :記載なし
公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和4年版 :記載なし
公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版 :記載なし
公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版 :記載なし
となっています。
つまり、建築工事も建築改修工事も、平成31年版を最後に記述が消えています。
なお、元々の記載内容は、
内装工事(※塗装工事ではなく)
合成樹脂塗床
・厚膜型塗床材 弾性ウレタン樹脂系塗床材
・厚膜型塗床材 エポキシ樹脂系塗床材
・薄膜型塗床材
それぞれについて、
(a) 弾性ウレタン樹脂系塗床材のホルムアルデヒド放散量は、JIS K 5970(建物用床塗料)に基づき、等級は特記による。特記がなければ、F☆☆☆☆とする。(公共建築工事標準仕様書 平成31年版より)
のような形での記載でした。
一方現行では、項目そのものは変化なく、
(a) 弾性ウレタン樹脂系塗床材のホルムアルデヒド放散量は、特記による。特記がなければ、F☆☆☆☆とする。(公共建築工事標準仕様書 令和7年版より)
となっています。
ということで、もとよりホルムアルデヒド放散量の求め方を示すために使われていただけのようですが、平成31年までの仕様書の影響により、自治体の仕様書でホルムアルデヒド放散等級の文脈でJIS K 5970の文字が今も残っているようです。
また、この項では床材それぞれに品質が定められており、項目や数値はJIS K 5970と異なります。
弾性ウレタン樹脂系塗床材は引張強さや伸び、硬さ、引張接着強さが求められており、摩耗試験も回転数やJIS K 5970上塗りと合格基準が異なります。
エポキシ樹脂系塗床材は引張接着強さや吸水性が求められており、これも摩耗試験も回転数や合格基準がJIS K 5970上塗りとは異なります。
薄膜型塗床材についても引張接着強さが求められています。なお耐水性や摩耗試験は条件も品質もJIS K 5970上塗りと同じようです。
これらの仕様から読み取れることは、「JIS K 5970に合致するだけでは、公共建築工事標準仕様書の指定する硬化後の品質を充分しない」ということです。樹脂種の指定もありますし。
ただし、これは「JIS K 5970の基準が甘い」ということではなく、「床用塗料に求められる性能は、用途や目的により多岐にわたるため、JIS K 5970という一つの基準だけで全体をカバーできるものではない」と考えるべきでしょう。
余談ですが、仕様に記載することについて
別視点で考えれば、仕様書に「JIS K 5970(相当)」という文言を入れることで、入札等でよくわからない製品を排除できるというメリットはあるかもしれません。
とはいえ、信頼できるメーカーも排除してしまう可能性もありますが……
深堀り①:床用塗料に求められる性能について
さて、前項で
「床用塗料に求められる性能は用途や目的により多岐にわたる」
と書きました。
実は、床用塗料の専用試験というものはほとんどありません
しかし、内外部の床材、床面についての規定は多くあります。
屋外ではセメント系舗装材から金属、コンクリ、石、木、
屋内ではカーペット、フロアタイル、シートや木や石、
これらについて、使用状況や環境により、様々な性能が求められます。
そして床用塗料にも、当然同じ環境では同じ性能が求められ、
仕様書などにも、塗料の規格名でなく、硬化した後の具体的な要求性能が記載されることになります。
ここでは、その性能の代表的なものについて深堀りしてみたいと思います。
なお、JIS K 5970に定められている耐衝撃性、耐摩耗性、
壁面でも求められる密着性、屋内で求められる抗菌、低臭や不燃については、床特有とはいえないため、ここでは省略します。
防滑性(滑り抵抗係数 C.S.R)
C.S.R(Coefficient of Slip Resistance)は、歩行を前提とした滑り抵抗係数であり、これが低いと滑りやすく(転倒しやすく)、また基本的には高いほど滑りにくく(転倒しにくく)なります。では高いほどいいのかというと、高すぎると歩きにくくなったり、防滑骨材がトゲトゲしすぎて足が痛くなったりします。
これは外部グレーチングやタイルなど屋外の舗装材や、カーペットやフロアタイルなど屋内の床材で使われる数値ですが、床用塗料でも一般的に使用されます。
試験方法はJIS A 1454 高分子系張り床材 滑り性試験 に定められています。
この数値は、床面が清浄か、濡れているか、砂が散らばっているか、油があるか、また足の方も靴を履いているか裸足か(裸足の場合はC.S.R・B)などで変わるため、ある程度具体的な床面を想定して試験条件が決定されます。
例えば浴室床面の材料であれば、床面が濡れている裸足状態での試験となります。実際は浴室床面に塗料を塗ることはほぼないと思いますが、例えばプールサイドでは濡れている裸足状態が想定されます。
この数値は様々な場所で基準が決められており、例えば
東京都都市整備局のバリアフリー整備資料 9-11枚目において、
具体的なシーンとC.S.R値が紹介されています。
また、推奨数値のみならず、
滑りの差
同一の床において、滑り抵抗に大きな差(C.S.R.で 0.2 以上)がある材料の複合使用は避けます。(突然滑り抵抗が変化すると、滑ったり、つまずいたりする危険が大きいです。
なども重要な概念です。
その他、日本建築学会の資料においても、
履物着用の場合のすべり
素足の場合のすべり
階段のすべり
などが検討され、それぞれC.S.R値を提案しています。
そのほかに具体的な数値として、
NEXCO 設計要領
国土交通省 高齢者、障碍者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準
文部科学省/国土交通省 プールの安全標準指針
等が存在し、使用場所、目的に応じてC.S.R値が定められています。
このように様々な場所でC.S.R値が使われており、床用塗料においても、カタログを見るとC.S.R値をスペックとして表示している製品が多くあります。
即硬性(即硬化性)
一般的に現場塗装の2液塗料は、混ぜてすぐ固まるということはありません。
手作業で塗装する場合、作業中に容器の中で塗料が固まってしまっては塗料が無駄になってしまいます。
そのため、塗料を混ぜてから塗装作業可能な時間……ポットライフ(可使時間)は、例えばJIS K 5658、JIS K 5659 、JASS18 M-109などでは5時間(以上)と定められており、また多くの塗料のポットライフはこれと同じ5時間(以上)のものが多いかと思います。
ただし、床用塗料は事情が違います。
壁面であれば、塗装後すぐ、べたべた触る人は(そんなに)いません。必要がないからです。しかし床は歩くための場所です。塗装後、乾燥時間のあいだはそこを通ることができません。
改修であれば通行禁止の期間は短いほどいいですし、新築であれ、作業者が通行できる場所は多いほどいいでしょう。
もちろん十分養生時間を確保できるケースもあり、床用塗料でも5時間以上のポットライフや、一週間の養生が必要な製品は多く存在します。
その一方で、次の日あるいは塗装後すぐにでもその床を使いたい、という需要に対し、速硬性の製品も多く存在します。
それらの製品はポットライフが1~2時間であるとか、塗装後の歩行可能までの時間が数時間であるなど、壁面用では考えられないほどに早く、床用塗料に特有の性能と言えるでしょう。
……特有はちょっと言い過ぎかもしれません。
防水など他の用途でも即硬性や、ポットライフが1分未満の超即硬性も存在します。
ただしちょっと特殊なものなので、例外ということで。
静電(帯電)防止性・導電性
床面での静電気発生や帯電を防止する機能です。
主な目的としては、
・電子機器の保護
・静電気を着火源とする、溶剤や粉塵への引火防止
・埃の付着防止
などであり、特にサーバールームなど電子機器の多いフロアでは、
埃も帯電も大きな問題となりますので、床材あるいは床用塗料に必須の性能となります。
なお、本来コンクリート床はなにも塗装しなくても静電防止性能が高く、
単に静電防止目的のみであれば床用塗料は不要なのですが、
無塗装では非常に埃が舞いやすいため、静電防止が必要とされるフロアでは床材をひくか塗装する必要があります。
静電(帯電)防止性・導電性と並べましたが、
単に静電防止や帯電防止というと、あくまで床表面に帯電しないという性能、
導電までいうと、完全に電気を逃がすというニュアンスが含まれます。
とはいえ、あまり厳密に使い分けられていないパターンも多いです。
試験規格としては、
JIS C 61340-4-1(IEC61340-4-1) 抵抗値(Ω)
JIS L 1021 人体帯電圧(V)
JIS A 1454 高分子系張り床材試験方法 表面電気抵抗値(Ω) 体積電気抵抗値(Ω)
JIS A 1455 帯電防止性能(U値)
などがあり、床用塗料でよく使われるのは体積電気抵抗値と帯電防止性能あたりでしょうか。それ以外も使われます。
この機能を実現するためには、塗膜内部にやや導電性のある材料を入れたり、場合によってはアースを取るなどの設計がなされます。
深堀り②:防塵性とは?
さて。
床用塗料といえば、やはり防塵性が求められます。
非常に一般的な性能ですが、総合的に防塵性をを示す直接的な試験や指標がないため、項を分けました。
何故総合的に防塵性を示せないかと言うと、その意味する範囲が広いからです。
実際の防塵性は、主に三つの性能の組み合わせです。
1.基材の発塵抑制
2.塗膜の発塵の少なさ
3.粉塵の付着防止
ただしこれは特有の指標ではなく、前項までの性能の組み合わせで
・基材の発塵抑制
主にコンクリート基材の発塵を防止する性能です。
樹脂が硬化する塗料は基本的にコンクリートより発塵が少ないので、全て防塵と言えます。
含浸タイプの強化剤でも、コンクリート打ち放しより抑制できれば防塵と言えます。
・塗膜の発塵の少なさ
これが耐摩耗性です。
タイヤや靴などでの摩耗が少ない=発生する粉塵が少ない
ということになります。
・粉塵の付着防止
これが帯電(静電)防止性です。
外部から持ち込まれた粉塵などを、床が吸着しないための性能です。
これらのうちどれか、或いはすべてを指して防塵性というため、
非常に範囲の広い概念となっており、目的とレベルによって使い分けられます。
例えば引火防止のみであれば、コンクリートそのものが静電防止となるため、
ケイ酸リチウムなどの強化剤で発塵を抑えれば事足りる場合もありますし、
クリーンルームやそれに準じる区画であれば3項目全て高い水準で必要になるでしょう。
ということで、割とどんな塗料でも塗ってしまえば防塵と言えてしまいますが、
その水準が複数あることには注意が必要です。
免責事項
この記事は記者の調査または経験に基づき、その内容には正確を期しておりますが、
購入や採用などの判断を行う場合は、必ず各規格書及び塗装仕様書の原本を確認してください。
また、「ここ間違ってるよ」「防塵性の概念がおかしいよ」といったことがあれば、
お気軽にお問い合わせフォームからご指摘ください。
公開日 2026/1/18
最終更新2026/1/18
