はじめに

塗装の主な目的には、基材の保護(防食性・防水性)、美観(意匠性・耐候性)などの機能性を付与することにあります。そのために、塗料には非常に多くの物質が含まれています。

しかし製品として社会に流通する責任として、単に機能性が十分であるだけではなく、安全性や持続可能性が求められます。
特に安全性は機能性の一部を犠牲にしてでも達成すべきという場面も多く、そのために含まれてはいけない、あるいは含まない方が望ましい、という物質が多数存在します。

時に法規制され、時に業界で自主規制し、あるいはなんだかんだ使用が続けられる。この記事では、そんな物質について取り上げていこうと思います。

特定の規格にかかわるものではないですが、様々な規格と横断的に絡む話も多くなります。

第2回は「塗料と〇〇フリー:作業環境編」として、主に塗装作業、また一部は製造作業環境や解体作業環境を主眼に置いた物質ベースの記事となります。
そのため、法令なども労働安全衛生法(有機則や特化則)化管法などがメインとなります。

なお、第3回「自然環境編」と続く予定です。

※当サイトの方針として事実ベースを心掛け、引用やリンクが多くなります。そのためやや読みにくいかもしれませんので、ご興味があるところだけ読んでいただければと思います。

BTX(またはTX)

なぜ配合されるのか

BTXは、Benzene (ベンゼン), Toluene (トルエン), Xylene (キシレン) の頭文字で、代表的な芳香族炭化水素系溶剤です。

無色透明で、溶解力が高く、ある程度安定しており、揮発性があり、そして安価であることなど、塗料の溶媒として非常に魅力な性質を持つため、いわゆる(強)溶剤系塗料やその希釈材(シンナー)に一般的に使用されます。

一方で、引火性があり、臭気が強く、麻酔作用や臓器毒性をはじめとした毒性があるという、メリットとデメリットともに大きい化学物質であり、これらを含む塗料を扱う場合は、労働安全衛生法、消防法等に従い、作業環境、防護、記録、また防火対策などを講じる必要があります。

主な規制・基準など

塗装作業環境において、主に2つの規制があります。

1.労働安全衛生法
 ベンゼンは、特定化学物質障害予防規則(特化則)特定第2類物質
 トルエンキシレン有機溶剤中毒予防規則(有機則)第2種有機溶剤にあたります。
 また、いずれも表示対象物質通知対象物質にあたります。

 特化則では既定の割合以上含まれることで規制の対象でベンゼン1%超
 有機則は一律で5%超含むものが第2種有機溶剤等となります。
 表示対象物質通知対象物質については物質ごとに閾値の定めがあります。

 閾値については下記サイトで確認できます。
職場のあんぜんサイト:化学物質:表示・通知対象物質(ラベル表示・SDS交付義務対象物質)の一覧・検索

2.消防法
消防法において、
 ベンゼン、トルエン:第4類引火性液体 第一石油類非水溶性液体
 キシレン(混合キシレンを含む):第4類引火性液体 第二石油類非水溶性液体
にあたります。
 これらを含む塗料も、その引火点に応じて分類され、
主に現場での保管において消防法による制限がかかります。

おまけ:毒物及び劇物取締法
 トルエンとキシレン(混合キシレンを含む)は、毒物及び劇物取締法における劇物であり、製造、譲渡・販売、譲受・購入、保管、取り扱い等に様々な制限があります。

 ただし、劇物にあたるのは原体のみ(ただし通常混合キシレンは原体とみなされる)ですので、塗料やシンナーに多く含まれていても、それ自体が劇物なることはなく、実際に使用される現場で同法が適用されることは通常ありません。
 ただし、有毒性などが下がるわけではないため、取り扱いには十分な注意が必要です。

深堀り

 実際のところ、BTXは非常に一般的な化学品ですので、BTXフリーというさいは塗料製品の規制というより、化学品規制という文脈の方がよくつかわれます。

 塗料でもBTXフリーをうたう製品は存在しますが、一般的な屋外で使用される塗料より、工場塗装が多いかと思われます。

 ところで、BTXとひとまとめにしましたが、トルエンキシレンは非常に一般的な塗料の溶剤ですが、ベンゼンを配合した塗料はあまり一般的ではなため、塗料においてはBを除いたTXフリーという言い方がむしろ一般的かもしれません。

エチルベンゼン

なぜ配合されるのか

塗料の性能や溶解性のためにエチルベンゼンが必要、ということはあまりありません。
ただ一般的に流通している工業用キシレンにはエチルベンゼンが20~60%程度含まれるため、キシレンを配合する目的によって、不可避に含まれます。
なので、同じ塗料メーカーの製品では、SDSでキシレン:エチルベンゼン比率が同じであるケースがよくみられます。

主な規制・基準など

塗装作業環境において、主に2つの規制があります。

1.労働安全衛生法
 エチルベンゼンは、発がん性の疑いがあり、特定化学物質障害予防規則(特化則)特定第2類物質
 であり、表示対象物質通知対象物質にあたります。

 キシレン(有機則)におまけのようについてくるのに、有害性が高い(特化則)という厄介者です。

2.消防法
消防法において、エチルベンゼンはキシレンと同様、第4類引火性液体 第二石油類非水溶性液体にあたります。
 これらを含む塗料も、その引火点に応じて分類され、
主に現場での保管において消防法による制限がかかります。

おまけ:毒物及び劇物取締法
 労安法上では、発がん性疑いからキシレンより毒性が強いように扱われるエチルベンゼンですが、毒劇物法上では、エチルベンゼンはキシレンとちがって劇物にあたりません。

ただし、エチルベンゼンを含む多くの工業用キシレンなどは原体とみなされ、毒物及び劇物取締法における劇物とされています。

 とはいえBTX同様、塗料やシンナーに多く含まれていてもそれ自体が劇物なることはなく、実際に使用される現場で同法が適用されることは通常ありません。ただし、有毒性などが下がるわけではないため、取り扱いには十分な注意が必要です。

深堀り 特化則だけど有機則の側面も

先に書いた通り、エチルベンゼンは特化則の管轄です。
有機則や特化則の化学品リストでは、かつて有機則の複数の物質が特化則に移行したことからわかるように、両方に掲載されることはありません。

そして、特化則はエチルベンゼンなら1%以上含む混合物が特別有機溶剤等となり、有機則ではリストの合計5%以上含む混合物が有機溶剤等となります。

この定義からすると
エチルベンゼン 0.5%
キシレン    0.5%
トルエン    4.1%

のみの有機溶剤を含む混合物は、実質的には有機溶剤を合計5%以上含むにもかかわらず、どちらの定義にも該当しないことになる

わけもなく

クロロホルムほか9物質に係る有機溶剤中毒予防規則の準用
(特化則第36条の5、38条の8、41条の2)

というルールによって、有機溶剤中毒予防規則同等の制限を受けることになります。
詳しくは下記などをご確認ください。
https://jsite.mhlw.go.jp/tokushima-roudoukyoku/var/rev0/0109/7990/2015610135844.pdf
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei48/dl/anzeneisei48-08.pdf
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei48/dl/pamphlet_005.pdf

イソシアネート
(ウレタン塗料の主剤/硬化剤として)

なぜ配合されるのか

イソシアネート(化合物)は、ポリウレタン塗料の主成分として利用されます。そのため、塗料に配合されるというよりは、主成分そのものと言えます。

ここで言うポリウレタン塗料は、ウレタン結合によって反応硬化するものをさしており、いわゆるウレタン塗料だけでなく、二液形のシリコン塗料ふっ素塗料有機無機ハイブリッドと言われる製品でも、ウレタン結合で反応硬化するものはイソシアネートが必須となります。

代表的なものに、
TDI(トリレンジイソシアネート/トルエンジイソシアネート)
MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)
HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)
IPDI(イソホロンジイソシアネート)

などがあり、またそのオリゴマー、ポリマーなどが利用されます。

イソシアネートの有害性としては、職業性喘息(イソシアネート気管支喘息)の原因となることが知られています。一度発症すると、 微量でもアレルギーを引き起こすことがあります。

主な規制・基準など

イソシアネートと一口に言っても、該当する物質は多数あり、それぞれに法規制が行われています。

その対象は主にモノマーですが、例えば先に挙げたTDIについても、
2,6-トリレンジイソシアネート(CAS:91-08-7)
2,4-トリレンジイソシアネート(CAS:584-84-9)

のように異性体があり、また
2,4-TDI 80% 2,6-TDI 20%混合物(CAS:26471-62-5)
のようなものもあります。
MDIは異性体が3種類あります(ただし使われるのは基本的に4,4'-MDIです)

そのため、法規制については網羅的に記載するのが難しいのですが、
代表的なものを挙げていきます。

1.労働安全衛生法
 特定化学物質障害予防規則(特化則)
 TDIは、特定第2類物質にあたります。
 1%以上が含有される化学物質を扱う場合、通常の有機則の措置に加えて作業主任者の選任、作業環境測定と記録の保存、特定化学物質健康診断などが必要となります。
 硬化剤として利用する場合は1%以上含有されるのが通常ですので、TDIモノマーを利用した塗料を扱う場合はこれらが必要になります。

 表示対象物質通知対象物質
 一部異性体を除き、大部分が該当します。具体的には
厚生労働省 職場のあんぜんサイト
労働安全衛生法に基づくラベル表示・SDS交付義務対象物質の一覧

 こちらで確認可能です。CASで調べて該当しないと思っても、品名で該当する場合があります。

その他、安衛法では
・変異原性が認められた既存化学物質
・作業環境評価基準
・リスクアセスメントを実施すべき危険有害物
などに該当する場合があります。

2.消防法
消防法においては物質ごとに違うのですが、TDIは、第4類引火性液体 第三石油類非水溶性液体にあたります。
 これらを含む塗料も、その引火点に応じて分類され、
主に現場での保管において消防法による制限がかかります。

3.労働基準法
 TDI(トリレンジイソシアネート/トルエンジイソシアネート)
 MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)
 HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)
 IPDI(イソホロンジイソシアネート)

これらはすべて疾病化学物質にあたります。

4.毒物劇物取締法
 イソシアネートについては、毒劇物としての規制がなかなか大きいです。

 毒物8
 5-イソシアナト-1-(イソシアナトメチル)-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン(※)及びこれを含有する製剤。
 ※IPDI

 劇物293
 ヘキサメチレンジイソシアナート(※)及びこれを含有する製剤
 ※HDI

 この記載方法を見てお分かりの通り、なんと、濃度による除外規定がありません。わずかであっても意図的に配合していれば、塗料液そのものが毒物劇物となります。
 さらに、現時点(2026年3月)では劇物ではありませんが、TDIは過去から劇物指定にする提案もあがっており、いつ指定されるか見通しが不明です。

深堀り

ウレタン塗料の主剤/硬化剤として←なにこれ

この項の冒頭に書きましたが、わざわざ回りくどい注釈をつけたのには理由があります。

・イソシアネートは、官能基としてイソシアネート基を官能基として持つ物質の総称です。ウレタン塗料の成分として使用されるのは、そのうちごくごく一部です。

・ウレタン塗料のイソシアネートが主剤か硬化剤かは明確ではありません。
 一般的に外壁塗料であれば硬化剤側であるのが一般的ですが、
 例えば防水材主材では主剤のウレタンプレポリマーに含まれるのが一般的なようです。

実際のところ、塗料は毒劇物なのか?

実際のところ、塗料の主剤や硬化剤が毒劇物にあたるケースは非常に少ないです。比較的古い製品であるにはあるのですが、品目もかなり限られますし、販売にも許可が必要など、販売店も取り扱いが難しく、あまり一般的ではありません。

しかし、SDSを見ると
ヘキサメチレンジイソシアネート <1%
だとか
イソホロンジイソシアネート 2%
等と記載された塗料は多数あります。特に前者は非常に多いです。
しかし塗料としては劇物や毒物とはなっていません。

これがなぜ毒劇物にならないかというと、意図的含有ではないという理屈と思われます。
あくまで主成分は規制外のポリイソシアネートなどであり、その不純物としてのHDI、IPDI、ということであれば、毒劇物法による規制を受けないためです。

ただし、毒劇物に指定されていようといなかろうと、その有害性には何ら変わりがなく、取り扱いなどには十分な注意が必要になります。

コバルト

なぜ配合されるのか

主にアルキド樹脂系の油性塗料など、空気中の酸素と反応して固まる酸化重合型の塗料において、乾燥を早めるためのドライヤー(乾燥剤・乾燥促進剤)として添加されます。

具体的には、
オクチル酸コバルト(2-エチルヘキサン酸コバルト)
ナフテン酸コバルト
といった物質が利用されます。

触媒としてごく少量を添加するだけで、塗膜を表面から乾燥・硬化させる効果を持つため、長年にわたり塗料業界で重宝されてきました。

また、化合物として複合酸化物顔料としても使用されます。
一般的な塗料で、無機顔料と言えばホワイト、ブラック、ベンガラ(赤さび)、オーカーの四色をさし、それ以外のブルーやグリーン、オレンジ、レッド、イエロー、などは有機顔料を使うのが一般的ですが、
複合酸化物顔料は無機でありながらイエローやブルー、グリーンが存在するため、高い耐候性が必要な一部の用途で、コバルトを含む複合酸化物顔料が使用されています。

主な規制・基準など

1.労働安全衛生法
 特定化学物質障害予防規則(特化則)
 「コバルト及びその無機化合物」が、特定第2類物質にあたります。
 1%以上が含有される化学物質を扱う場合、通常の有機則の措置に加えて作業主任者の選任、作業環境測定と記録の保存、特定化学物質健康診断などが必要となります。
 ドライヤーとして使用されるコバルト化合物は有機化合物なのでこれには当たりませんが、無機顔料として使用される場合はこの規制に該当します。

  表示対象物質通知対象物質
 「コバルト及びその化合物」という非常に広い範囲で指定されています。
 裾切値も0.1%であり、入っていれば表示や通知が必要となります。
厚生労働省 職場のあんぜんサイト
労働安全衛生法に基づくラベル表示・SDS交付義務対象物質の一覧

深堀り 実際に規制されているのか

前項の通り、有機コバルト化合物は、法規制としてはあまり厳しい部類ではありません。実際の所、ドライヤーとしての使用はまだ可能であり、また、複合酸化物顔料としても塗料設計の選択肢として存在はします。

それでもコバルトフリーなどと言われ、ドライヤー選択で鉄やマンガン、ジルコニウムなどへの代替が緩やかに進行しているのは、発がん性の疑いなどから欧州REACH規則などで排除が進められているという側面があります。

無機化合物であれ有機化合物であれ、個別の物質についてはそれぞれ毒性も違い、十分な評価が進められているとはいいがたいですが、世界的な流れとしてコバルトフリーが進められているのが現状です。

MOCA

なぜ配合されるのか

MOCAこと
3,3'-ジクロロ-4,4'-ジアミノジフェニルメタン
は、主にウレタン防水材の硬化剤として使用される芳香族アミンです。

ウレタンプレポリマーのイソシアネートと反応し、ウレア結合を形成します。

主な規制・基準など

1.労働安全衛生法
 特定化学物質障害予防規則(特化則)
 MOCAは、特定第2類物質にあたり、また特別管理物質です。つまり発がん性があります。
 1%以上が含有される化学物質を扱う場合、通常の有機則の措置に加えて作業主任者の選任、作業環境測定と記録の保存、特定化学物質健康診断などが必要となります。

  表示対象物質通知対象物質
 裾切値が0.1%であり、入っていれば表示や通知が必要となります。
厚生労働省 職場のあんぜんサイト
労働安全衛生法に基づくラベル表示・SDS交付義務対象物質の一覧

深堀り

明確な有害性

MOCAについては、実際に社会問題となりました。

2010年代、国内の化学工場等でMOCAの製造に従事していた作業員から、膀胱がんを発症する事例が相次いで報告されました。その後に多数の労災認定もされており、2017年には特殊健康診断内容も追加され、膀胱がんの原因物質として厳しく規制されています。

また、元MOCAを取り扱う作業従事者に対しても、厚生労働省もアナウンスをしています。
MOCAを取り扱う作業に従事していた労働者の皆様へ

法的な規制だけを見ると、前項の無機コバルトとそこまで大きく変わらないようにも見えますが、化合物ごとの害が明確でないが包括的に規制されるコバルト化合物と対照的に、MOCAは単一物質として有害性が明確にされており、また実際に上記のような経緯があるため、MOCAフリーは非常に強力に進められています。

どのあたりがMOCA?

法律上ではIUPAC命名法の3,3'-ジクロロ-4,4'-ジアミノジフェニルメタンと呼ばれますが、
MOCAは通称としての、メチレンビス(オルト-クロロアニリン)の略であり、
Methylenebis(Ortho-ChloroAniline)の頭文字です。
なお、ビスを拾ってMBOCAと言われることもあります。


MEKO(メチルエチルケトオキシム・MEKオキシム)

なぜ配合されるのか

塗料分野では、皮張り防止剤として使用されます。

アルキド樹脂を主とした油性塗料が、缶の中で酸化・硬化しないよう、添加剤として使用されます。

主な規制・基準など

MEKOは、近年急速に安衛法規制が進められている物質です。

・2024年4月~
 0.1%以上で皮膚等障害化学物質 不浸透性の保護具等の使用義務物質

・2025年4月~
 0.1%以上で通知対象物質、1%以上で表示対象物質

・2027年4月~
 0.1%以上で表示対象物質(裾切値変更)
 がん原性物質 作業記録等の 30 年保存対象物質

特にこのがん原性物質指定がやや重く、現時点で特化則による制限を受け対応している事業者ではともかく、そうでない事業者は2027年4月以降の使用がなかなか厳しくなります。

深堀り

塗料よりも……

先に書いた通り、MEKOは塗料分野では油性塗料の皮張り防止剤として使用されますが、
建築分野としてみると、それより影響の大きな用途があります。

それは、シリコーンシーラント(シリコーンコーキング)で、いわゆる(脱)オキシムタイプと言われる製品です。

塗料分野では、言ってはなんですが発がん性を持つ製品はまだ多く、特に様々な溶剤系塗料を使用する事業者では、仮にMEKO一つを排除したところでほかの物質により特化則による各種制限を受け、作業記録の保存や特定健康診断が必要である場合が多いです。

しかし、コーキングは違います。ホームセンターなどで誰でも購入可能であり、
脱オキシムタイプは2026年時点で一番一般的かつ高性能、安価な製品です。

このコーキングを業務で使う場合に「作業記録などを30年間保存すること」と言われると、なかなか負担が大きいです。そのため、本格的に規制強化される2027年までに、使用者・メーカーとも、脱アルコールタイプなどへの切り替え検討が進められています。

信越化学 縮合硬化型液状シリコーンゴムのオキシムタイプ製品の切り替えについて

特化則との違い

がん原性物質は、比較的新しい規制であり、国の行うGHS分類において、発がん性が区分1(区分1A、1Bを含む)ものが指定されています。(特化則特別管理物質とエタノールを除く)

厚生労働省 職場のあんぜんサイト がん原性物質

発がん性が指定条件であり、作業記録などを30年保存などは特化則に似ていますが、
特化則と比較すればやや規制としては弱くなります。

がん原性物質指定ですが、塗料分野でよく使用されるものとして結晶質シリカなど影響が大きいものが含まれます。

余談ですが、労安法には安衛則のがん原性物質とは別に、
がん原性指針対象物質というものもあります。

厚生労働省 職場のあんぜんサイト がん原性に係る指針対象物質

こちらでは強溶剤系塗料に含まれるエチルベンゼン、塗装剥離で使用されるジクロロメタンが指定されています。

タール(コールタール)

なぜ配合されるのか

塗料分野においてタールと言えば、やはりタールエポキシ樹脂塗料です。
その優れた耐水性(ひいては防食性)、耐薬品性、厚塗り性から、主に重防食分野で使用されてきました。

主な規制・基準など

タールは混合物として、

1.労働安全衛生法
 特定化学物質障害予防規則(特化則)
 コールタールは、特定第2類物質にあたり、また特別管理物質です。つまり発がん性があります。
 5%以上が含有される化学物質を扱う場合、通常の有機則の措置に加えて作業主任者の選任、作業環境測定と記録の保存、特定化学物質健康診断などが必要となります。

  表示対象物質通知対象物質
 いずれも裾切値が0.1%であり、入っていれば表示や通知が必要となります。
厚生労働省 職場のあんぜんサイト
労働安全衛生法に基づくラベル表示・SDS交付義務対象物質の一覧

深堀り(現行タールエポキシ樹脂塗料)

他の項目と違い、塗料分野でのタールフリーは、現時点でほぼ実現されています。

しかし、タールエポキシ樹脂塗料製品は現在も販売されています。

また、塗料規格としても、
JWWA K 115 水道用タールエポキシ樹脂塗料及び塗装方法
などが存在します。

現在一般的に販売されているタールエポキシ樹脂塗料は、
発がん性物質を含まないタールフリー対応済みのものであり、
タールフリーのタールエポキシ樹脂塗料とでもいうべきものとなっています。

おわりに

今回は「〇〇フリー 作業環境編」というテーマでした。
主に、一般的に「〇〇フリー」と言われるものを挙げましたが、
作業環境への規制対象は非常に多く、他にもまだまだありそうです。

次回、「〇〇フリー 自然環境編」へと続きます。

免責事項

この記事は記者の調査または経験に基づき、その内容には正確を期しておりますが、
情報として判断を行う場合は、必ずリンクした各法令及び信頼できるソースを確認してください。
また、「これ間違ってない?」「これも〇〇フリーと言われるよ」といったことがあれば、
お気軽にお問い合わせフォームからご指摘ください。

公開日 2026/03/28
最終更新2026/03/28