
JASS18 M-205 アクリルシリコン樹脂ワニス
(アクリルシリコン樹脂ワニスおよび着色アクリルシリコン樹脂ワニス)
概要
JASS18 M-205は「アクリルシリコン樹脂ワニス」についての規格です。
JASSの塗料規格は種類と品質、試験方法などを規定しているもので、用途について冒頭に明示していません。
規格名そのもので判断するか、塗装仕様を確認して、それぞれの用途などを把握することになります。
また、品質や試験内容を読むことでも類推は可能です。
JASS18 M-205は名前のみではいまいちピンときませんが、
塗装仕様セメント系素およびせっこうボード素地面塗装 アクリルシリコン樹脂ワニス塗り(2-ASC)に、
主として,建築物の外部壁面に用いる透明仕上と着色透明仕上げを目的としたアクリルシリコン樹脂ワニス塗りに適用する
とあります。つまり、セメント系素材へのアクリルシリコン樹脂系クリヤーやカラークリヤーということになります。詳しくは塗装仕様の部分で記載します。
2025年9月時点の最新は建築工事標準仕様書・同解説 JASS18 塗装工事 第8版(2013)であり、詳細な規格の内容は下記をご確認ください。
- 建築工事標準仕様書・同解説 JASS18 塗装工事 第8版(2013) (日本建築学会)
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- 目次プレビュー(日本建築学会)
種類と主な違い
JASS18 M-205 アクリルシリコン樹脂ワニス(アクリルシリコン樹脂ワニスおよび着色アクリルシリコン樹脂ワニス)の種類は二つあります。
・アクリルシリコン樹脂ワニス
・着色アクリルシリコン樹脂ワニス
違いも見ての通り、通常品と着色品という違いになります。
塗装仕様を併せて見ますと、透明仕上げと着色透明仕上げとなっており、いわゆるクリヤーとカラークリヤーであることがわかります。
品質
JASS18 M-205規格は、次の表のように品質を規定しています。
下記は規格より抜粋・変形し引用
| アクリルシリコン樹脂ワニス | 着色アクリルシリコン樹脂ワニス | |
| 透明性 | 透明であるものとする. | 見本品と比べて同等の着色であり,透明であるものとする. |
| 塗装作業性 | 2回塗りで,吹き付け塗りの塗装作業に支障があってはならない. | |
| ポットライフ | 5時間で使用できるものとする. | |
| 乾燥時間(h) | 16以内 | |
| 塗膜の外観 | 塗膜の外観が正常であるものとする. | |
| 耐水性 | 水に浸したとき異常があってはならない. | |
| 耐アルカリ性 | アルカリに浸したとき異常があってはならない. | |
| 屋外暴露耐候性 | 24か月の試験でふくれ,割れ,はがれがなく,見本品に比べてつやと色の変化の程度が大きくないものとする. | |
さて、比較のためにJASS18 M-206 常温乾燥形ふっ素樹脂ワニスの品質表を下記に引用します
| 常温乾燥形ふっ素樹脂ワニス | 常温乾燥形着色ふっ素樹脂ワニス | |
| 透明性 | 透明であるものとする. | 見本品と比べて同等の着色であり,透明であるものとする. |
| ポットライフ | 5時間で使用できるものとする. | |
| 塗装作業性 | 吹き付け塗りで塗装作業に支障があってはならない. | |
| 乾燥時間(h) | 16以内 | |
| 塗膜の外観 | 塗膜の外観が正常であるものとする. | |
| 耐水性 | 水に浸しても異常があってはならない. | |
| 耐アルカリ性 | アルカリに浸しても異常があってはならない. | |
| 屋外暴露耐候性 | 24か月の試験でふくれ,割れ,はがれがなく,見本品に比べてつやと色の変化の程度が大きくないものとする. | |
| 樹脂分中のふっ素の定量% | 15以上 | |
項目順、塗装作業性の2回塗り指定、細かい言い回しの差はありますが、
「樹脂分中のふっ素の定量」を除くとほぼ同じ内容になっています。
屋外暴露耐候性まで同じ期間となっており、品質上はふっ素の含有以外ほぼ同程度の規定となります。
ただし、さらに細かいことをいうと、試験時の試験片サイズが
JASS18 M-205
特に規定する以外は、表面調整を行ったフレキシブル板(約300*150*3mm)を用いる。
JASS18 M-206
特に規定する以外は、表面調整を行ったフレキシブル板(約150*70*3mm)を用いる。
とJASS18 M-206の実に4倍以上の試験片サイズが規定されており、試験のうち塗膜の外観・耐水性・耐アルカリ性の3項目でこのサイズが適用されます。
特に後ろの2項目では試験片をそれぞれ3枚ずつ作成し、そのうち2枚を水や水酸化カルシウム水溶液に浸漬するため、用意する水槽を考えると、比較するとやや場所を取り面倒な試験となります。
主な製品
JASS18 M-205 に該当する主な製品は下記の通りです。
| 日本ペイント | ピュアライド UV プロテクトSi クリヤー |
はい、なんと確認できた範囲で1種類のみです。
また、ピュアライド UV プロテクトSi クリヤーの商品ページやパンフレットそのものにはJASS18 M-205という表記はみあたらず、
日本ペイント 設計価格表 2025年9月版
に、JASS18 M-205に適合する旨が記載されています。
なお、同社の設計価格表 2023年5月版では、
「ファインシリコンフレッシュクリヤー」が適合品として明記されており、
これは024年に日本ペイント社の4Fシリーズが終了しDFシリーズにリニューアルしたさい、ピュアライドUVプロテクトクリヤーシリーズも大きく拡充されており、この影響と思われます。
・ニュースリリース
建築用分野「DFシリーズ」からリニューアル発売開始 ~次世代フッ素樹脂塗料「ファインDFセラミック」・ 「ピュアライドUVプロテクトクリヤーシリーズ」~
JASS18 M-206 常温乾燥形ふっ素樹脂ワニス
の解説記事でも書いた通り、JASS18 M-206適合品は新しく設定されなかった一方、
JASS18 M-205については新しく適合品を設定されたようです。
塗装仕様
JASS18 M-205の記載がある仕様として、
JASS18
セメント系素およびせっこうボード素地面塗装
アクリルシリコン樹脂ワニス塗り(2-ASC)
があります。
主として,建築物の外部壁面に用いる透明仕上と着色透明仕上げを目的としたアクリルシリコンワニス塗りに適用する。
としており、塗装種別は
・A種 下塗り1回/中塗り2回/上塗り1回 計4回塗り
・B種 下塗り1回/中塗り1回/上塗り1回 計3回塗り
の2種で、すべて同じ種類の塗料を使用し、塗り回数が違うのみです。
適用下地は
・コンクリート
・セメントモルタル
・プレキャストコンクリート部材
となっています。
塗装方法は
アクリルシリコン樹脂ワニス :はけ塗り、ローラーブラシ塗り、吹き付け塗り
着色アクリルシリコン樹脂ワニス:吹き付け塗り
となっています。
工程表を確認すると、工程間隔がすべて16h以上7d以内となっており、素地調整を含まず、この塗料を塗る作業だけでA種はまる4日、B種はまる3日かかります。
ただし、吹付け塗りの場合は工程間を5時間以上とできるとも定めており、その場合は、A種B種とも2日かかります。
このような塗装仕様の工程表では、一般的なメーカーの塗装仕様に定める所要量でなく塗付け量で規定されているため、それを厳守する場合、
・刷毛塗りは3-4日かかる
・吹付け塗りは2日で終わるが必要な塗料の量がかなり増える(ロスが大きい為)
となり、厳しい2択を迫られますことになります。
なお、着色の場合は
なお、公共建築工事標準仕様書(建築工事編)および 公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)にはJASS18 M-205を指定した仕様はないようです。
深堀り:アクリルシリコン樹脂とは何か
本項のJASS18 M-205 アクリルシリコン樹脂ワニス
に限らず、
材料規格
JASS18 M-404 アクリルシリコン樹脂塗料用中塗り
また、塗装規格
アクリルシリコン樹脂ワニス塗り(2-ASC)
アクリルシリコン樹脂エナメル塗り(2-ASE)
弱溶剤系アクリルシリコン樹脂エナメル塗り(LS2-ASE)
等に、アクリルシリコン樹脂という名称が共通して使用されています。
さて、アクリルシリコン樹脂というのは何でしょうか。
改めて考えると、あまり具体的な定義がないことに気づきます。
アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂は、JIS K 5500 塗料用語にその項目があります。
ふっ素樹脂は、JASS18 M-206の品質において間接的ですが定義しています。
しかし、アクリルシリコン樹脂は、そのいずれにも定義されていません。
また、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ふっ素樹脂という名称は、プラスチックやエラストマーとしても一般的に使用されますが、アクリルシリコン樹脂という名称は、塗料・コーティング分野を除いては基本的に使われません。
塗料分野で主に使われる用語でありながら、塗料分野での定義がなされていないという、なかなか不思議な言葉となっています。
さて、統一された定義が見つからないとはいえ、もちろん用語として一般に使われる以上、定義そのものは存在します。信頼できる塗料メーカーの定義を見ていきましょう。
・日本ペイント 用語解説
https://www.nipponpaint.co.jp/nippelab/term/52/
シリコン(シリコーン)樹脂塗料
アクリルシリコン樹脂を用いた塗料が代表的。外壁の塗り替えで最も多く使われるタイプの塗料で、溶剤形ではファインシリコンフレッシュ、ファインSi、1液ファインシリコンセラUVが、水性ではオーデフレッシュSi100Ⅲ、水性ファインSiが代表的。
・エスケー化研 Q&A
https://www.sk-kaken.co.jp/faq/faq-01/
Q.アクリル、ウレタン、シリコン、ふっ素の違いを教えて下さい。
A.アクリル、ウレタン、シリコン、ふっ素の順に耐候性、耐久性が高くなります。
期待耐用年数は、アクリルで5~8年、ウレタンで8~10年、シリコンで10~15年、ふっ素が15~20年と一般的には言われています。
※アクリルシリコンとは記載していませんが、耐候性の並びから、ここでのシリコンはアクリルシリコン樹脂塗料を指しているものと思われます
・大日本塗料 塗料の種類>シリコーン樹脂塗料の特徴
https://www.dnt.co.jp/products/kind/5.html
シリコーン樹脂塗料
シリコーン樹脂を塗料に用いる際は、通常アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂などにより変性させて使用されます。常温乾燥型があり、耐熱性、耐候性に優れます。
※アクリルシリコン樹脂とは記載していませんが、シリコーン樹脂のアクリル樹脂変性について触れています。
さて、50年以上の歴史があるメーカーの記述を引用しましたが、いずれもシリコン(シリコーン)塗料にとしての記述となっており、アクリルシリコン樹脂の説明としては、やや直接的ではありません。
可能な限り情報ソースを明記するのが当サイトの方針ですが、
この件については行き詰ってしまったようですので、観念して記者の知見から述べていきます。
アクリルシリコン樹脂とは
・シリコーン変性アクリル樹脂と、アクリル変性シリコーン樹脂、またはその共重合の総称。部分的にブレンドになっている場合も含む。
ただし、慣例として無機ハイブリッド樹脂として販売されているものは上記に該当してもアクリルシリコン樹脂とは言わない。
・実務においては単にシリコン樹脂(シリコーン樹脂)という場合も多いが、
文脈によりいわゆるアクリルシリコン樹脂を指す場合と、アクリルを含まないシリコーンレジンを指す場合がある。
ざっくりと、このような形でしょうか。
JIS K 5500に定義される樹脂分類でいえば、基本的にはアクリル樹脂、あるいはシリコーン樹脂の範囲に含まれます。
それなりに歴史や実績があり、塗料分野では一般的な語句として使われ、定義も可能になってきたかと思いきや、
比較的最近現れた無機ハイブリッド樹脂により、さらに厳密な定義が難しくなってしまった印象があります。
免責事項
・この記事は2025年9月時点の記者の調査または知見に基づき、内容には正確を期しておりますが、購入や採用などの判断を行う場合は、必ず各規格書及び塗装仕様書の原本を確認し、必要に応じてメーカーに確認してください。
・背景ハイライト部はその直前に示した資料からの引用となります。
・また、「ここ間違ってるよ」「このような塗装仕様でも使うよ」といったことがあれば、お気軽にお問い合わせフォームからご指摘ください。
公開日 2025/9/28
最終更新2025/10/18
