概要

JIS A 6909は「建築用仕上塗材」についてのJIS規格で、セメント,合成樹脂などの結合材,顔料,骨材などを主原料とし,主として建築物の内外壁又は天井を,吹付け,ローラー塗り,こて塗りなどによって立体的な造形性をもつ模様に仕上げる建築用仕上塗材についての規定です。

塗料についてのJIS規格は基本的にJIS K 5***ですが、JIS A 6*** などにも一部の塗料が規定されています。
AとKの違いは、JIS A「土木及び建築」JIS K「化学」という分野の違いによるものです。
そのため、JIS A 6909 建築用仕上塗材には、塗料以外の製品も含まれます。

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種別、呼び名と通称

JIS K 5658の種別は、以下のように分類されています。

大分類 種別 呼び名 通称 製品リンク
薄付け
仕上塗材
外装けい酸質系薄付け仕上塗材 外装薄塗材Si シリカリシン 製品一覧を見る
可とう形外装けい酸質系薄付け仕上塗材 可とう形外装薄塗材Si 製品一覧を見る
外装合成樹脂エマルション系薄付け仕上塗材 外装薄塗材E 樹脂リシン、アクリルリシン、陶石リシン 製品一覧を見る
可とう形外装合成樹脂エマルション系薄付け仕上塗材 可とう形外装薄塗材E 弾性リシン 製品一覧を見る
防水形外装合成樹脂エマルション系薄付け仕上塗材 防水形外装薄塗材E 単層弾性 製品一覧を見る
外装合成樹脂溶液系薄付け仕上塗材 外装薄塗材S 溶液リシン 掲載無し
内装セメント系薄付け仕上塗材 内装薄塗材C セメントリシン 掲載無し
内装消石灰・ドロマイトプラスター系薄付け仕上塗材 内装薄塗材L しっくい、けい藻土塗材 掲載無し
内装けい酸質系薄付け仕上塗材 内装薄塗材Si シリカリシン 掲載無し
内装合成樹脂エマルション系薄付け仕上塗材 内装薄塗材E じゅらく、けい藻土塗材 製品一覧を見る
内装水溶性樹脂系薄付け仕上塗材 内装薄塗材W 繊維壁、京壁、けい藻土塗材、じゅ らく 製品一覧を見る
厚付け
仕上塗材
外装セメント系厚付け仕上塗材 外装厚塗材C 掲載無し
外装けい酸質系厚付け仕上塗材 外装厚塗材Si 掲載無し
外装合成樹脂エマルション系厚付け仕上塗材 外装厚塗材E 樹脂スタッコ、アクリルスタッコ、弾性スタッコ 製品一覧を見る
内装セメント系厚付け仕上塗材 内装厚塗材C セメントスタッコ、けい藻土塗材 掲載無し
内装消石灰・ドロマイトプラスター系厚付け仕上塗材 内装厚塗材L しっくい、けい藻土塗材 掲載無し
内装せっこう系厚付け仕上塗材 内装厚塗材G せっこうプラスター、けい藻土塗材 掲載無し
内装けい酸質系厚付け仕上塗材 内装厚塗材Si シリカスタッコ 掲載無し
内装合成樹脂エマルション系厚付け仕上塗材 内装厚塗材E 樹脂スタッコ、アクリルスタッコ、けい藻土塗材 掲載無し
軽量骨材
仕上塗材
吹付用軽量骨材仕上塗材 吹付用軽量塗材 製品一覧を見る
こて塗用軽量骨材仕上塗材 こて塗用軽量塗材 掲載無し
複層
仕上塗材
ポリマーセメント系複層仕上塗材 複層塗材CE セメント系吹付タイル 製品一覧を見る
可とう形ポリマーセメント系複層仕上塗材 可とう形複層塗材CE 微弾性セメント系吹付タイル 掲載無し
防水形ポリマーセメント系複層仕上塗材 防水形複層塗材CE 製品一覧を見る
けい酸質系複層仕上塗材 複層塗材Si シリカタイル 製品一覧を見る
合成樹脂エマルション系複層仕上塗材 複層塗材E アクリルタイル 製品一覧を見る
防水形合成樹脂エマルション系複層仕上塗材 防水形複層塗材E 弾性タイル、複層弾性、弾性防水 製品一覧を見る
反応硬化形合成樹脂エマルション系複層仕上塗材 複層塗材RE 水系エポキシタイル 製品一覧を見る
防水形反応硬化形合成樹脂エマルション系複層仕上塗材 防水形複層塗材RE 製品一覧を見る
防水形合成樹脂溶液系複層仕上塗材 防水形複層塗材RS 掲載無し
可とう形
改修用
仕上塗材
可とう形合成樹脂エマルション系改修用仕上塗材 可とう形改修塗材E 製品一覧を見る
可とう形反応硬化形合成樹脂エマルション系改修用仕上塗材 可とう形改修塗材RE 製品一覧を見る
可とう形ポリマーセメント系改修用仕上塗材 可とう形改修塗材CE 製品一覧を見る
複層仕上塗材及び
可とう形改修用仕上塗材
耐候形 1種 掲載無し(※)
耐候形 2種 掲載無し(※)
耐候形 3種 掲載無し(※)

掲載無し(※)… 耐候形1~3種は、下塗りや主材との組み合わせにより認証されるものであり、
        上塗り塗料が認証/相当という区別ができないため個別に掲載はしておりません。
        主材に応じた上塗り材を各メーカーにご確認ください。

掲載無し  … その規格の製品が確認できないもの、また確認できても塗料メーカー製品でないセメント系材料については掲載はしておりません。

その他   …「通称」は一般的に使われる名称を記載しておりますが、同じ通称が二つ以上の規格を指したり、
        記載していない通称、また同じ通称で別の規格を指すケースも想定されますので、あくまで参考としてください。

主な違い

見ての通り非常に種類が多いですが、まず、掲載なしの製品はほぼ塗料ではないので、塗料選定の場面では気にしなくてOKです。
内装厚塗材E防水形複層塗材RSについては、存在すれば塗料になるかと思いますが、
日本建築仕上材工業会の公表している生産数量データを参照すると、防水形複層塗材RSの製造はゼロのようです。(日本建築仕上材工業会の会員外企業で存在する可能性はあります)

参考:建築用仕上塗材生産数量表(令和5年、6年)

内装厚塗材Eについては、内装用と外装用の区別がない(合算計上?)ため不明です。

項目が多く詳細な解説は難しいですが、呼び名のおおよその見方としては、
内装/外装…内装用か外装用か(そのまんま)
厚塗/薄塗…厚塗材か薄塗材か(そのまんま)
防水形  …防水性能がある(塗膜の伸び性能が大きい)
可とう形 …可とう性がある(塗膜を曲げても割れない)
末尾記号 …原料または硬化方式(E:エマルション、Si:ケイ酸質系、RE:反応硬化型エマルション、CE:ポリマーセメント等)
のように考えれば覚えやすいかと思います。

通称を見ての通り、単に「リシン」「スタッコ」「タイル」「弾性」と言った場合、
おそらくこれだろう、という予想はつきますが、厳密にどれを指すか確定しません。
(「弾性タイル」「単層弾性」などであればほぼ確定なのですが)
通称のみ連絡の場合などは、どの規格の事を指しているか、確認することを推奨します。

主な製品

JIS A 6909 に該当する主な製品は下記の通りです。(項目が多いため、表を4つに分けています)

- 塗料データベース内検索

メーカー 内装薄塗材E 内装薄塗材W 外装薄塗材E 外装厚塗材E 外装薄塗材Si 吹付用軽量塗材
エスケー化研 SK調湿ウォール
シポカケン#300
シポカケンDO
シポロール
シポロールM
セラスカケン
シポロック
セラミソフトスタッコ
ソフトスタッコ
セラミタイトリシン シポライトA
シポライトBクリヤー
シポライトB調色
セラミタイトソフト
関西ペイント アレスアクアビルド
シリコンテックス
菊水化学工業 アクリルソフト キクスイコートリシン骨材入
キクスイローラーコート既調合型
グラナダ
キクスイグラストSi
キクスイ タイロックR骨材入
ナチュラルトーン
シリカリシン キクスイ パールコート
キクスイ ヒルトン
スズカファイン スズカローラーリシン
ノキテンバリアA
スズカリシン
スズカスキン
ラフトンスタッコ ラフトンシリカリシン
日本ペイント ジキトーンスキン
ニッペ リシン
ニッペリシンR
フジワラ化学 シルタッチSR
シルタッチSN
和美(わび)
都の砂
ジュラクペンアート
メーカー 可とう形外装薄塗材E 可とう形外装薄塗材Si 可とう形改修塗材CE 可とう形改修塗材E 可とう形改修塗材RE
エスケー化研 セラミソフトリシン
ソフトリシン
ソフトロール
水性ソフトサーフSG 水性ソフトサーフエポ
水性弾性サーフエポ
菊水化学工業 キクスイ 弾性リシン リカバリー ソフトリカバリー
ロイヤルフィラー
リカバリー
ソフトリカバリーエポ
スズカファイン ラフトン弾性リシン
日本ペイント パーフェクトフィラー
アンダーフィラー弾性エクセル
パーフェクトフィラー
アンダーフィラー弾性エクセル
関西ペイント アレスホルダーHG
アレス弾性ホルダー防水形
アレスダイナミックフィラー
シーカ・ジャパン スーパームキロール
スーパームキタイル
アクレスフィラー
ダイヤアクレスフィラーダンセイ
神東塗料 リフレエース
ライトリフレ
水谷ペイント リフレッシュフィラー
ロックペイント ビニロック エラスティックフィラーⅢ
田島ルーフィング RVフィラー
メーカー 複層塗材CE 複層塗材E 可とう形複層塗材CE 複層塗材RE 複層塗材Si
エスケー化研 レナラック
レナラックローラー用
ツーキコートタイル
ツーキコートローラー用
レナキャスト
レナキャストホーロー
セラミタイトタイル
セラミロール
菊水化学工業 キクスイ タイル・ルナ キクスイ タイル・エマルナ
キクスイ ルナロール
ナイスウォール
リカバリー
キクスイ タイル・エポ
キクスイ エポロール
シリカタイル・ルナ
シリカロール
スズカファイン ラフトンローラー
ラフトンジャンボ
ラフトンローラーRE
ラフトンジャンボRE
ラフトンローラーSi
ラフトンジャンボSi
日本ペイント タイルラックEMA-Sベース100K タイルラック1液EPO-Sベース タイルラックシリカーSベースⅡ
関西ペイント マルチタイルラフRE
シーカ・ジャパン ダイヤエポンE
メーカー 防水形外装薄塗材E 防水形複層塗材CE 防水形複層塗材E 防水形複層塗材RE
エスケー化研 ニュートップレスクリーン
ニュートップレスクリーンタイル
セラミクリーン
セラミクリーンタイル
ダンツーコート
ダンツーコートローラー用
レナエクセレント
レナエクセレントローラー用
レナフレンド
レナフレンドローラー用
ダンツーキャスト
ダンツーキャストローラー用
関西ペイント アレスゴムタイルニューラフ
アレス弾性ホルダー防水形
透湿ファンデラフ
菊水化学工業 BeニューSi
BeニューS
BeニューSiT
BeニューST
ナイスウォール・デラックス ベース キクスイ 弾性タイル・ルナ
キクスイ 弾性ロール
透湿弾性タイル・Lベース
透湿弾性タイル・REベース
スズカファイン ビューレつや消し
ビューレ半つや
セラビューレ
セラビューレつや消し
セラビューレ半つや
セラビューレCOOL
ビューレ
コキューダンセイローラーG
ラフトン弾性ジャンボG
コキューダンセイG
ラフトン弾性ローラーG
ラフトン弾性ローラーRE
コキューダンセイローラーRE
ラフトン弾性ジャンボRE
コキューダンセイRE
日本ペイント DANシリコンセラR(ローラータイプ) DANタイル中塗Rホワイト
DANタイル中塗Sホワイト
DANフィラーエポ
DANフィラーエポS
神東塗料 ラバロンクリーン
田島ルーフィング RVダンセイタイルR
RVダンセイタイルS
フジワラ化学 パスコート
シーカ・ジャパン カイテキウォール(R・S)
ダイヤアクレスフィラーダンセイ

※ 主に適合品を記載していますが、一部相当品が含まれます。個別ページ及びメーカー情報を必ずご確認下さい。

塗装仕様

JIS A 6909は非常に種類が多く、また様々な場面で必要とされます。
公共工事に限らず、集合住宅、また一般的な住宅工事でもよく目にすることがあります。

主なものに、公共建築工事標準仕様書(建築工事編)および 公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)があります。
詳細は以下の仕様書を参照ください。直接該当ページへとリンクしています。

また、下記のような塗装仕様でも、JIS A 6909製品を使用するよう指定/推奨しています。

余談①:耐候形1種、2種、3種について(組み合わせ)

複層仕上塗材可とう形改修用の仕上塗材として、耐候形1種、2種、3種が求められる場合があります。
しかし、耐候形1種と記載してある製品を塗るだけで認証仕様となる訳ではありません。

塗料単体でなく、
「下塗り - 主材(複層仕上塗材可とう形改修用) - 仕上塗材(耐候形1種、2種、3種)」
という組み合わせで、JIS認証を受けるからです。

塗料としては主材がJIS品ということになりますが、
JIS認証の塗装仕様となると、下塗りや仕上塗材まで、決められた組み合わせが必要となります。
一部メーカーは、下記のように組み合わせ表を公開しています。(公開していないメーカーについては問い合わせが必要です)

このように組み合わせが決まっているため、例えば、
仕上塗材が耐候形1種であっても、主材が複層塗材Eでは取得しているが改修塗材Eの場合は取得していない
などの場合があり、非常にややこしいことになっています。
そして、上記の組み合わせ表のみですべての情報が網羅されているとは限りません。
同等仕様可の場合は組み合わせ表で十分ですが、JIS認証仕様が必要な場合はメーカーへの確認が必要です。
可とう形改修塗り材E耐候形1種の正式仕様はどうなりますか」のように問い合わせましょう。

また、このように組み合わせで取得が必要であるため、
メーカーも上塗り材の新商品発売ごとに取得ということは現実的ではありません。
そのため、自社で同程度の性能を確認した相当品という商品が非常に多く存在します。
特に、耐候形1種については、おそらく近年発売の高耐候性塗料には相当品が多いのではないでしょうか。
なお耐候形1種品質規格はおそらくクリヤー塗料を想定していないため、上記はエナメル塗料に限った話になります。

余談②:弾性とか微弾性って?

よく耳にする、弾性と微弾性

すごく大雑把に言えば、
弾性塗料 …よく伸びる塗料
微弾性塗料…ちょっと伸びる塗料
ということになりますが、最初に書いた表にある通りで、あくまで通称であることに注意が必要です。

弾性についていえば、防水形複層塗材E・RE・RS・CE、防水形外装薄塗材Eの規格品は、
品質規格に伸び(4項目)伸び時の劣化があるため、明確に弾性塗料といって間違いないでしょう。
しかし、可とう形外装薄塗材E(通称:弾性リシン)は、通称に「弾性」を含みますが品質規格に伸びがありません。
おそらくこれは外装薄塗材E(通称:リシン)と比較してより弾性があるという意味であって、
この規格の製品が全て防水形相当の伸びの品質規格をクリアするかというと、おそらく厳しいのではないかと思われます。
ただし個別の製品性能については不明のため、可とう性でも防水形水準まで伸びる製品もあるかもしれません。

微弾性についていえば、基本的には可とう形がつく規格が該当しますが、伸びの規格試験がありません。そのため「ちょっと伸びる」といっても、弾性に対して何割かなどということは言えません。
また同じように可とう形がつく製品でも、その伸びは製品により相当に差があることが推測されます。
ちなみに可とう形可撓形と書きます。可とう性試験では、塗料を塗った基材を曲げて、塗膜が割れないことを確認します。

免責事項

この記事は記者の調査または経験に基づき、その内容には正確を期しておりますが、
購入や採用などの判断を行う場合は、必ず各規格書及び塗装仕様書の原本を確認し、必要に応じてメーカーに確認してください。
また、「ここ間違ってるよ」「このような塗装仕様でも使うよ」といったことがあれば、
お気軽にお問い合わせフォームからご指摘ください。