概要
JIS A 6916は「建築用下地調整塗材」についてのJIS規格で、建築用仕上塗材、塗料、セラミックタイルなどによる内外装仕上げ工事の下地調整のために使用する下地調整塗材についての規定です。
主にセメントベースの材料ですが、一部が塗料であることと、複数の塗料メーカーが製品を販売しているので、こちらもデータベースに記載しています。
なお、JIS A 6916と別にJIS K 6916という規格も別に存在するので注意が必要です。
AとKの違いは、JIS A「土木及び建築」、JIS K「化学」という分野の違いによるものです。
2025年8月時点の最新はJIS A 6916:2021であり、詳細な規格の内容は下記をご確認ください。
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- 単品販売(JIS A 6916:2021)(JSA)
- 目次プレビュー(JSA)
等級と主な違い
JIS A 6916の品質は、以下のように分類されています。
種別 | 呼び名 | 製品リンク |
---|---|---|
セメント系下地調整塗材 1種 | 下地調整塗材C-1 | 製品一覧を見る |
セメント系下地調整塗材 2種 | 下地調整塗材C-2 | 製品一覧を見る |
合成樹脂エマルション系下地調整塗材 | 下地調整塗材E | 製品一覧を見る |
セメント系下地調整厚塗材 1種 | 下地調整塗材CM-1 | 掲載無し |
セメント系下地調整厚塗材 2種 | 下地調整塗材CM-2 | 製品一覧を見る |
主な違い
見ての通り、大きく分けてセメント系と合成樹脂エマルション系の2つに分類されます。
そしてセメント系が調整塗材と調整厚塗材に分かれ、それぞれ1種と2種に分類されます。
合成樹脂エマルション系は名前が長いですが、ざっくり言うと水性の樹脂系です。一般的に塗料と呼ばれるものです。
セメント系にも樹脂は混和されていますが、あまり塗料とは呼びません。
1種と2種の違いは、規格上の品質で言うと付着強さや耐衝撃の基準、またCMについては曲げ強さなどの項目がありますが、総じて2種の方が試験条件や品質基準が厳しいです。
では、より性能の高い2種だけあればどの場面でも必ず使えるかというと、そうではありません。
製品によってC-1品とC-2品で使用目的や塗り厚を別に設定していたりするため、
目的などで使い分けることになります。
下地調整塗材CM-1については、塗料メーカー製品を確認できず当サイトの検索では出ませんが、
製品としては一般的であり、セメント系のメーカーが販売しております。
(日本化成、トクヤマエムテック、二瀬窯業等)
主な製品
JIS A 6916 に該当する主な製品は下記の通りです。
※ 主に適合品を記載していますが、一部相当品が含まれます。個別ページ及びメーカー情報を必ずご確認下さい。
塗装仕様
JIS A 6916は一般的な下地調整剤であるため、様々な場面で必要とされます。
また、仕様に指定がなくても汎用品として使用するケースもあるようです。
塗装仕様としては、公共建築工事標準仕様書(建築工事編)および 公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)で指定されています。
詳細は以下の仕様書を参照ください。直接該当ページへとリンクしています。
- 公共建築工事標準仕様書 建築工事編(令和7年版)
15 章 左官工事 3節 モルタル塗り
15 章 左官工事 6節 仕上塗材仕上げ
表 18.2.4 モルタル面及びせっこうプラスター面の素地ごしらえ
表 18.2.5 コンクリート面及びALCパネル面の素地ごしらえ
表 18.2.6 コンクリート面及び押出成形セメント板面の素地ごしらえ
- 公共建築改修工事標準仕様書 建築工事編(令和7年版)
4章 外壁改修工事 3節 モルタル塗り仕上げ外壁の改修
4章 外壁改修工事 5節 仕上塗材仕上げ外壁等の改修
6章 内装改修エ事 15 節 モルタル塗り
表 7.2.4 モルタル面及びせっこうプラスター面の下地調整
表 7.2.5 コンクリート面及びALCパネル面の下地調整
表 7.2.6 コンクリート面及び押出成形セメント板面の下地調整
表 7.3.4 モルタル面及びせっこうプラスター面の素地ごしらえ
表 7.3.5 コンクリート面及びALCパネル面の素地ごしらえ
表 7.3.6 コンクリート面及び押出成形セメント板面の素地ごしらえ
また、JASS23吹付け工事においても指定されています。
建築工事標準仕様書・同解説 23 第5版: JASS(Amazonアフィリエイトリンク)
※おそらくJASS15左官工事においても同様かと思いますが、未確認です。
そのほか、下記のような塗装仕様でも、JIS A 6916製品を使用するよう指定/推奨しています。
余談:認証品、相当品について
JIS A 6916についても、JIS認証を受けていない相当品というのは一般的です。
また、特に指定がなく相当品が用いられる場面も多いです。
JIS認証品が必要か、そうでないかは仕様により判断が必要です。
製品本体を見ればJISマークがあるためすぐ判別がつきますが、
カタログを見る際は、認証品か相当品か注意して読むことが必要です。
余談②:生産量
日本建築仕上材工業会(NSK)が、年間の生産量を集計しています。
この一番上の行がJIS A 6916の建築用下地調整塗材です。
NSK会員のJIS品だけでも13万トン以上と、すごい量が生産されています。
下地調整塗材は一般的な塗料に比べるとkgあたりは安価ですが、
様々な素地調整に必須であることから、かなり大きい市場があることが分かります。
免責事項
この記事は記者の調査または経験に基づき、その内容には正確を期しておりますが、
購入や採用などの判断を行う場合は、必ず各規格書及び塗装仕様書の原本を確認し、必要に応じてメーカーに確認してください。
また、「ここ間違ってるよ」「このような塗装仕様でも使うよ」といったことがあれば、
お気軽にお問い合わせフォームからご指摘ください。