
JIS K 5516 合成樹脂調合ペイント
概要
JIS K 5516は「合成樹脂調合ペイント」についてのJIS規格で、建築物(鉄部,木部)及び鉄鋼構造物の中塗り又は上塗りに用いる合成樹脂調合ペイントについての規定です。
2025年10月時点の最新はJIS K 5516:2019であり、詳細な規格の内容は下記をご確認ください。
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種類
JIS K 5516には、下記のような種類があります
| 種類 | 主な用途 |
|---|---|
| 1種 | 建築物及び鉄鋼構造物の中塗り及び上塗り |
| 2種中塗り用 | 大形鉄鋼構造物の中塗り |
| 2種上塗り用 | 大形鉄鋼構造物の上塗り |
表の通り3種類ありますが、通常、2種中塗り用に対しては2種上塗り用を使用しますので、使い分けとしては2種類になります。
ただし、2種上塗り単体で使用することを想定した塗料も存在します。
品質項目としては、
・容器の中の状態
・塗装作業性
・表面乾燥性
・塗膜の外観
・隠蔽率
・促進黄色度(1種のみ)
・鏡面光沢度
・重ね塗り適合性(1種、2種上塗り用)
・上塗り適合性(2種中塗り用)
・加熱残分
・耐塩水性(2種上塗り用のみ)
・促進耐候性(1種、2種上塗り用)
・屋外暴露耐候性(1種、2種上塗り用)
・ホルムアルデヒド放散等級
となっており、なかなか項目が多いです。
中でもやや特徴的な品質項目が、1種の促進黄色度でしょうか。
これは、高湿度に調整された黒塗りの(遮光した)デシケーターの内部に、白を塗装した試験体を48時間静置し、その後測定算出したD値を黄変の度合いとする試験です。
一般的に黄変というと紫外線によるものを想像しがちですが、この試験では紫外線劣化のない暗所において高い湿度で黄変を促進しており、屋内暗所において黄変する傾向のあるアルキッド樹脂系の上塗り塗料に特徴的な試験となります。
(ところで比較評価でなく絶対値評価なので、原料選択で有利不利が出そうですが、どうなんでしょうか。)
主な製品
JIS K 5516 に該当する主な製品は下記の通りです。
※ 主に適合品を記載していますが、一部相当品などが含まれている可能性があります。個別ページ及びメーカー情報を必ずご確認下さい。
品名に、「マリン」が散見されることから、規格に規定された建築分野のみならず、船舶用にも用いられることがわかります。
塗装仕様・必要とされる場面
主に、公共工事建築仕様書などでJIS K 5516が必要とされます。
詳細は以下の仕様書を参照ください。直接該当ページへとリンクしています。
- 公共建築工事標準仕様書 建築工事編(令和7年版)
18章 塗装工事
4節 合成樹脂調合ペイント塗り (SOP)
18.4.2 木部の合成樹脂調合ペイント塗り :1種
18.4.3 鉄鋼面の合成樹脂調合ペイント塗り :1種
18.4.4 亜鉛めっき鋼面の合成樹脂調合ペイント塗り :1種
- 公共建築改修工事標準仕様書 建築工事編(令和7年版)
7章 塗装改修工事
5節 合成樹脂調合ペイント塗り(SOP)
7.5.2 木部の合成樹脂調合ペイント塗り :1種
7.5.3 鉄鋼面の合成樹脂調合ペイント塗り :1種
7.5.4 亜鉛めっき鋼面の合成樹脂調合ペイント塗り :1種
上記のように指定されています。いわゆるSOP塗りということになりますが、
また、建築工事標準仕様書 JASS18 の塗装仕様においても、
金属系素地面塗装において
主として,屋外の鉄鋼の一般部,構造用鉄部,鋼製建具,鋼製設備の機器や配管などに対する合成樹脂ペイント塗り
として、
合成樹脂調合ペイント塗り(SOP) :1種、2種中塗り用、2種上塗り用
木質系素地面塗装について
主として,建築物内・外部の不透明塗装仕上げを目的とした合成樹脂調合ペイント塗り
として、
合成樹脂調合ペイント塗り(SOP) :1種
上記のような仕様で指定されています。
深堀り①:1種と2種の使い分け
JIS K 5516 の品質から見ると、
促進黄色度 :1種のみの規定
屋外暴露耐候性:1種「1年間の屋外暴露耐候性試験に耐える」
2種上塗り用「2年間の屋外暴露耐候性試験に耐える」
耐塩水性 :2種のみの規定
となっており、単純にどちらが上位という事ではなく、
美装の面では1種、それよりも耐候性やさびへの抵抗を期待する場面では2種ということになりそうです。
次に、塗装仕様から見ると、
公共建築工事標準仕様書及び改修仕様書のSOP塗り:1種のみ
建築工事標準仕様書の金属系素地面のSOP塗り :1種または2種
建築工事標準仕様書の木質系素地面のSOP塗り :1種のみ
となっており、
公共建築工事標準仕様書では屋内外とも1種を用いるのに対し、
建築工事標準仕様書では主に屋外に1種または2種を用いることから、
耐候性で分けているのではなく、想定対象の想定、
つまり大型構造物を想定しているかどうかという違いかもしれません。
深堀り②:合成樹脂調合ペイントvsフタル酸樹脂エナメル(前編)
JIS K 5516 合成樹脂調合ペイント
と近い性質の塗料として、
JISK 5572 フタル酸樹脂エナメル
という規格があります。
2025年時点で
JISK 5516 1965-02-01 制定 (御年60歳)
JISK 5572 1951-05-22 制定 (御年74歳)
と、JIS K 5572の方が年上です。
詳細な比較は、JISK 5572 フタル酸樹脂エナメルの記事を書く際に後編とてまとめる予定ですが、まずは簡単な部分だけ。
JISK 5516より引用
合成樹脂調合ペイントは,着色顔料・体質顔料などを,主に長油性フタル酸樹脂ワニスで練り合わせて作った液状・自然乾燥性の塗料である。
JISK 5572より引用
フタル酸樹脂エナメルは,有色の塗装に適する酸化乾燥性の液状塗料で,乾性油変性フタル酸樹脂を主な塗膜形成要素とし,自然乾燥中に,空気酸化によって塗膜を形成するようにしたものである。フタル酸樹脂エナメルは,乾性油変性フタル酸樹脂を混合炭化水素系溶剤に溶かして作ったワニスに,顔料を分散して作る。
書き方こそ違うものの、実質的にはかなりの部分同じことを書いています。
同じように液状の乾性油変性フタル酸系樹脂が主成分の油性塗料であり、同じように空気酸化で硬化する自然乾燥塗料であり、同じように着色塗料であり、同じように混合炭化水素系溶剤に溶かして作ったワニスに顔料が分散されています。
わかりやすい違いとしては、JISK 5516で「主に長油性フタル酸樹脂」と明確に書いているところでしょうか。
JIS K 5500 塗料用語
アルキド樹脂塗料 の項より引用
塗膜形成要素として,アルキド樹脂を用いて作った塗料。アルキド樹脂に含まれる脂肪酸には酸化形と非酸化形とがある。樹脂は脂肪酸含有量の多少によって長油・中油・短油に分ける。
酸化形長油アルキド樹脂を用いて作った合成樹脂調合ペイントは建築,船舶,鋼橋などの塗装の上塗りに,酸化形短油アルキド樹脂又は酸化形中油アルキド樹脂を用いて作った塗料は鉄道車両,機械などの塗装の上塗りに用いる。JIS K 5516, JIS K 5572など参照。
のニュアンスからすると、JIS K 5572については短油または中油性のアルキドと読み取れますが、厳密に定義としてそうであるかは、信頼度の高いソースが見つからず不明です。
JIS K 5572記事での後半戦へと続きます。
免責事項
この記事は記者の調査または経験に基づき、その内容には正確を期しておりますが、
購入や採用などの判断を行う場合は、必ず各規格書及び塗装仕様書の原本を確認してください。
また、「ここ間違ってるよ」「このような塗装仕様でも使うよ」といったことがあれば、
お気軽にお問い合わせフォームからご指摘ください。
