
JIS K 5633 エッチングプライマー
概要
JIS K 5633は「エッチングプライマー」についてのJIS規格で、エッチングプライマーについての規定です。
2026年3月時点の最新はJIS K 5633:2010であり、詳細な規格の内容は下記をご確認ください。
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種類
JIS K 5633は、下記のような種類があります
| 種類 | 概要 |
|---|---|
| 1種 | 金属生地に対する塗装系の付着性を増加する目的で, 塗り付けた後,数日以内に次の塗料を塗り重ねるように作ったもの。 |
| 2種 | 鋼板の素地調整後,本格塗装を行うまでの間, 一時的に防せい力を付与する目的で,塗り付けた後, 数か月以内に次の塗料を塗り重ねるように作ったもの。 |
このように目的によって1種と2種が分かれており、想定している塗り重ね時間が大きく違います。
品質
品質項目としては、下記が定められています。
・密度(主剤・添加剤)
・容器の中の状態(混合物)
・ポットライフ(混合物)
・塗装作業性(混合物)
・乾燥時間(混合物)
・塗膜の外観(混合物)
・耐衝撃性 (混合物)
・耐屈曲性(混合物)
・耐塩水性(混合物 2種のみ)
・加熱残分(主剤)
・溶剤不溶分(主剤)
・溶剤不溶物中の組成-酸化亜鉛(主剤 1種のみ)
・溶剤不溶物中の組成-無水クロム酸(CrO3として)(主剤 1種のみ)
・鉛の定性(主剤 1種のみ)
・りん酸(H3PO4として)(添加剤)
・屋外暴露耐候性(混合物 2種のみ)
ちょっと珍しいのは、主剤、添加剤、混合物、それぞれに品質が定められていることです。
主剤や塗料液と混合物にそれぞれ品質が定められているのは、(わざわざ明示されていない場合が多いとはいえ)よくあることですが、主剤と添加剤に別々の品質項目がある規格はやや少ないです。
また、酸化亜鉛、無水クロム酸、りん酸と、成分の定量が多いのも特徴です。(鉛は定性で不含有の確認)
性能面の品質のみならず、成分面が具体的に指定されているのは、技術として十分確立していて信頼できる一方、根本的な技術改良が(技術だけでなく需要面も含め)難しいものだと言えるかもしれません。
主な製品
JIS K 5633 に該当する主な製品は下記の通りです。
| メーカー | 1種 | 2種 |
|---|---|---|
| 関西ペイント | メタラクトH5 | メタラクトH15 |
| 大日本塗料 | プリマイトCF-100 | |
| 日本ペイント | ビニレックス110アクチブプライマー | ビニレックス120アクチブプライマーエコ |
※ 主に認証品を記載していますが、一部相当品が含まれる場合があります。必ず個別ページ及びメーカー情報をご確認下さい。
この通り、大手メーカーが販売していますが、品目数としてはかなり少ないようです。
塗装仕様・必要とされる場面
主に、公共工事建築仕様書(電気設備工事編)などでJIS K 5633が必要とされま……した。
公共建築工事標準仕様書 電気設備工事編(平成28年版)
には記述がありますが、
公共建築工事標準仕様書 電気設備工事編(平成31年版)
公共建築工事標準仕様書 電気設備工事編(令和4年版)
公共建築工事標準仕様書 電気設備工事編(令和7年版)
にはありません。
同様に、
公共建築改修工事標準仕様書 機械設備工事編(平成28年版)
には指定されていますが、
公共建築改修工事標準仕様書 機械設備工事編(平成31年版)
公共建築改修工事標準仕様書 機械設備工事編(令和4年版)
公共建築改修工事標準仕様書 機械設備工事編(令和7年版)
では消えています。

こんな感じで、化学処理の項目ごと消えています。
なぜ消えたのか、十分な根拠は見つかりませんでしたが、
記者の推測としては、脱クロムの流れと、高性能なエポキシプライマーによる(ウォッシュプライマー抜きでの)付着性確保の二つが大きいように思います。
また、各自治体の土木工事共通仕様書などでも、塗料として指定されています
北海道建設部 北海道建設部土木工事共通仕様書 令和6年10月版
福井市 福井市土木工事共通仕様書 令和2年 10 月
大阪市建設局 工事請負共通仕様書 令和3年3月
ただし、
農林水産省 農村振興局整備部設計課 土木工事共通仕様書 令和7年4月
(国土交通省) 中部地方整備局 土木工事共通仕様書 令和6年3月
等の省庁仕様書ではエッチングプライマーの記述はあってもJIS K 5633の具体的指定はないので、各自治体の仕様書の元ネタが気になるところではあります。
そのほか、首都高規格の長ばく形エッチングプライマー(SDK P-402)では、
本規格の内容は、JIS K 5633 2 種 エッチングプライマーの規格を基本とし、耐塩水性を耐複合サイクル防食性に、屋外暴露耐候性を暴露防錆性に変更し、赤外吸収スペクトルを加えたものである。
となっており、規格のベースとしても使われています。
ほかにも、防衛省規格のDSPなどにおいても、JIS K 5633が引用されています。
深堀り:そもそもエッチングプライマーって?
JIS K 5633を読むと、この塗料が密着性や防錆性を付与する目的と言うことは分かります。
しかし、JISには主にエポキシ樹脂系のさび止めプライマー規格が他にも多くあります。
それらとエッチングプライマーは何が違うのか。
深堀りしてみましょう。
JIS K 5500における定義
JIS K 5500 塗料用語では、エッチングプライマーおよびエッチングについて以下のように規定されています。
エッチングプライマー
金属塗装の際の素地処理に用いるプライマーの一つ。成分の一部が生地の金属に反応して化学的生成物を作り,生地に対する塗膜の付着性を増すようにした,金属素地処理用の塗料。主に,りん酸・クロム酸を含む。通常は,全成分を二つに分けて作って一組として供給し,使用の直前に混合する。JIS K 5633参照。
エッチング
塗装前に化学薬品によって金属表面を荒らす方法。備考1. 酸性溶液によって,さび及び/又はミルスケールを除去する処理,及びstainingと同様な木材の着色のための特殊な処理をいう。2. 広い意味では,何らかの侵食作用によって,表面から材料を除去することの総称。化学研磨,電解研磨,イオンエッチング,熱エッチングなどが含まれる。工業的には与えられたパターンに一致させて,材料を化学的又は電気化学的に除去することをいうことがある。転じて,金属表面を食刻することから,腐食のことをいうこともある。
(JIS K 5500 塗料用語より引用)
上記の内容をまとめると、下記のようなものであると読み取れます。
- 処理: 素地処理として塗料と金属そのものを反応させる、化成処理的な側面を持っている。
- 成分: 品質の通り、主にりん酸とクロム酸を含んでいる。
- 形態: 反応性が高く、使用直前に混合する2液型が標準である。
特にひとつ目、塗料でありながら金属下地の化成処理を担う、という点のが他の塗料と明確に違う点と言えるでしょう。
そのほか一般的な説明
以降は、規格等のソースがない一般論となります。
エッチングプライマーは、別名「ウォッシュプライマー」とも言われます。
これは、金属表面を洗う(Wash)ことに由来するものと思います。
一般的な塗料は、金属表面の凹凸に塗料が入り込んで固まる投錨(アンカー)効果などで付着させます。
一方で、エッチングプライマーは、添加剤に含まれるりん酸が金属表面を微細に腐食(エッチング)させ、そこに、樹脂とクロム酸塩などが複雑に反応し、金属と一体化した強固なリン酸塩皮膜のようなものを作ります。
現代においてやや忌避されつつある背景
前述の通り、現在でも非常に多くの仕様書で指定されてはいますが、公共建築工事標準仕様書などからはエッチングプライマーの記述が消えつつあります。これには大きく2つの理由があると考えられます。
- 環境負荷(脱クロム): JIS K 5500の記述や、JIS K 5633 1種の品質にクロム酸とある通り、エッチングプライマーにはクロムが含まれます。環境規制の強化により、これらを使わない工法への転換が進んでいます。
※なお、JIS K 5633 2種については、クロムを使わない製品が一般的かと思います。 - 代替技術の向上: かつては亜鉛めっき等への密着にはエッチングプライマーが必須でしたが、現在はこれらにも直接強力に密着する変性エポキシ樹脂塗料が普及しています。
工程を一つ減らせる(エッチングプライマーを省ける)メリットが大きいため、徐々に主役の座を譲っています。
いわゆるショッププライマーも、こういったものに置き換えられつつあるようです。
まとめ
JIS K 5633 エッチングプライマーは、塗料としての被覆と、化学薬品としての処理剤の側面を併せ持った特殊な塗料です。
現在は環境対応と技術革新により出番が減る方向にはあるものの、まだまだ必要とされる仕様等も多く、現時点では十分現役と言えるでしょう。
免責事項
この記事は記者の調査または経験に基づき、その内容には正確を期しておりますが、
購入や採用などの判断を行う場合は、必ず各規格書及び塗装仕様書の原本を確認してください。
また、「ここ間違ってるよ」「このような塗装仕様でも使うよ」といったことがあれば、
お気軽にお問い合わせフォームからご指摘ください。
公開日 2026/3/21
最終更新2026/3/21
