概要
JIS K 5658は「建築用耐候性上塗り塗料」についてのJIS規格で、主に屋外で使用される建築物のコンクリート,セメント・モルタル面,プレキャストコンクリートなどの美装仕上げ塗りに用いる建築用耐候性上塗り塗料についての規定です。
2025年8月時点の最新はJIS K 5658:2010であり、詳細な規格の内容は下記をご確認ください。
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等級と主な違い
JIS K 5658の品質は、その耐候性によって以下の等級に分類されています。
等級 | 促進耐候性試験 (キセノンアーク) |
屋外暴露耐候性 (24か月) |
---|---|---|
1級 |
照射2,500時間 光沢保持率 ≥ 80% |
光沢保持率 ≥ 60% 白亜化等級 0〜1 |
2級 |
照射1,200時間 光沢保持率 ≥ 80% |
光沢保持率 ≥ 40% 白亜化等級 0〜2 |
3級 |
照射600時間 光沢保持率 ≥ 70% |
光沢保持率 ≥ 30% 白亜化等級 0〜3 |
※促進耐候性試験にはこれ以外にも評価項目がありますが、1~3級共通の為省略しています。
これ以外の品質については、1~3級共通で定められています。
詳細は冒頭に紹介した規格書を確認してください。
主な製品
JIS K 5658 に該当する主な製品は下記の通りです。
※ 主に認証品を記載していますが、一部相当品が含まれます。個別ページ及びメーカー情報を必ずご確認下さい。
塗装仕様
主に、DP塗装と呼ばれる仕様でJIS K 5658 が必要とされます。
公共建築工事標準仕様書(建築工事編)および 公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)では、コンクリート面及び押出成形セメント板面の耐候性塗料塗り(DP)について、JIS K 5658を明記した塗装仕様が定められています。
いわゆる、A種、B種、C種(改修ではA-1種、A-2種など)という指定は、この仕様書によるものです。
詳細は以下の仕様書を参照ください。直接該当ページへとリンクしています。
相当品/代替品について
JIS K 5658の認証は受けておらず、JIS表示もないが、定められている品質について
メーカーが自社で同程度の性能と判断した相当品という商品も存在します。
また認証を受けていないものについても、
・JIS規格品質全項目に合致しているが、JIS認証は受けていない という、いわゆる相当品
・JIS規格品質の一部を除いて合致している、JIS認証を受けることができない という、代替品
があります。
例えば、仮に施主(公共工事なので国や県や市、また委託したデザイナーや設計者など)から、
「周辺環境から溶剤塗料は使えない」(JIS K 5658に規定はないが、認証品は(弱)溶剤タイプしかない)
「どうしても光沢を落としたい」(JIS K 5658は艶有のみ)
等要望があった際には、前者は相当品、後者は代替品を使用する可能性があります。
もちろん、相当品/代替品を使用する場合は責任者、関係者が合意する必要があります。
余談①:規格によって、定められている範囲が違う話
JIS K 5658 は塗料や塗膜の品質を定めていますが、原料(樹脂種)や、水/溶剤系の規定はありません。
そのため、水性アクリルシリコン樹脂塗料でもJIS K 5658 の 1級 を取得することは理論上可能です。
(私見ですが、大手メーカーの2025年現在の技術であれば、品質上もおそらく可能でしょう)。
しかし、公共建築の仕様書においてDP 耐候性塗料塗りのA種は『JASS 18 M‑405(フッ素樹脂系中塗り)+JIS K 5658 1級』が指定されているため、水系アクリルシリコン樹脂のJIS K 5658 1級が存在したとしても、溶剤系であるJASS18 M-405と組み合わせるという現実的ではない状況が起きます。
実際はそんな塗料は存在しない(はず)ですが、JASSの規格とJISの規格で定めている項目が違うのに、同じ仕様書で重ね塗りされることで不思議な状況を引き起こしていたりします。
余談②:JASS18の塗装略号との関連
これは塗料の品質規格ではなく塗装仕様ですが、JASS18に定められた塗装略号というものがあります。
JIS K 5658(またはJIS K 5659)と同じような場面で出てくるものに、下記があります。
JASS18 塗装略号 | 名称 |
---|---|
2-FUE | 常温乾燥形ふっ素樹脂エナメル塗り |
2-ASE | アクリルシリコン樹脂エナメル塗り |
2-UE | 2液形ポリウレタンエナメル塗り |
LS2-FUE | 弱溶剤2液形アクリルシリコン樹脂エナメル塗り |
LS2-ASE | 弱溶剤2液形アクリルシリコン樹脂エナメル塗り |
LS2-UE | 弱溶剤系2液形ポリウレタンエナメル塗り |
LSがつく物が弱溶剤型、FUEがフッ素樹脂エナメル、ASEがアクリルシリコン樹脂エナメル、UEがポリウレタンエナメル塗りとわかります。
そのため、例えば「JIS K 5658 1種であれば2-FUEかLS2-FUEだな」……と確実に判断できれば楽なのですが、これも厳密に1:1対応するようなものではありません。
塗装の種別を表すものなので、実務上はほぼ同じと考えてもそれほど間違っておらず、同じ塗料でJIS K 5658 1種=LS2-FUEという場合は多いですが、そう明記されない場合もあります。
この塗装略号が出てきた場合には、必ずカタログやメーカーに確認が必要です。
免責事項
この記事は記者の調査または経験に基づき、その内容には正確を期しておりますが、
購入や採用などの判断を行う場合は、必ず各規格書及び塗装仕様書の原本を確認してください。
また、「ここ間違ってるよ」「このような塗装仕様でも使うよ」といったことがあれば、
お気軽にお問い合わせフォームからご指摘ください。。