概要
JIS K 5659は「鋼構造物用耐候性塗料」についてのJIS規格で、主に鋼構造物の美装仕上げ塗りに用い,長期の耐候性をもつ塗料についての規定です。
2025年8月時点の最新はJIS K 5659:2018であり、詳細な規格の内容は下記をご確認ください。
- JISハンドブック 30 塗料 (2025) (Amazonアフィリエイトリンク)
- 単品販売(JIS K 5659:2018)(JSA)
- 目次プレビュー(JSA)
なお、2021年にも試験方法の一部改正がありました。
- JIS マーク表示認証に係る製品の JIS 改正情報(日本塗料検査協会)
種類(区分や等級)
JIS K 5659には、下記のような種類があります
種類 | 区分 | 等級 | 製品リンク |
---|---|---|---|
A種(溶剤系) | 上塗り塗料 | 1級 | 製品一覧を見る |
2級 | 製品一覧を見る | ||
3級 | 製品一覧を見る | ||
中塗り塗料 | 製品一覧を見る | ||
B種(水系) | 上塗り塗料 | 1級 | 製品一覧を見る |
2級 | 製品一覧を見る | ||
3級 | 掲載無し | ||
中塗り塗料 | 掲載無し |
主な違い
まず大きく分けて、A種とB種があり、表にも記載しましたがA種が溶剤系でB種が水系です。
より細かく言うと、A種は溶剤系2液反応硬化形、B種は水系の1液または2反応硬化形です。
(わかりやすいよう2液と書きましたが、規定としては多液です)
また、A種とB種では加熱残分や低温安定性など、一部の品質規格が異なります。
このようにA種とB種が規定されていますが、しかし2025年時点、ほぼすべてのJIS認証製品はA種のようです。(当サイトに掲載しているB種製品は相当品のみ)
そもそもJIS K 5659 B種の試験をするためには、JIS K 5551 E種のさび止め塗料が必要となりますが、JIS K 5551 E種自体、私の探した範囲では相当品・試験合格品しかないようです。
塗料の試験をするために必要な塗料がない。服を買いに出るための服が無いみたいな状態でしょうか。
B種が追加されたのが2018年なので、はや7年。なかなか金属に対しての水系塗料が普及するまでは時間がかかる気がします。高速道路系の規格がけん引するのでしょうか。
閑話休題……次に中塗り塗料と上塗り塗料があります。
上塗り塗料について、JIS K 5659は(JIS K 5658と違って)、原料(樹脂)の指定があり、
「ふっ素系樹脂,シリコン系樹脂又はポリウレタン系樹脂」となっています。
またさらに、上塗り塗料は耐候性により分類されます。
等級 | 促進耐候性試験 (キセノンアーク) |
屋外暴露耐候性 (24か月) |
---|---|---|
上塗り塗料1級 |
照射2,000時間 光沢保持率 ≥ 80% |
光沢保持率 ≥ 60% 白亜化等級 0〜1 |
上塗り塗料2級 |
照射1,000時間 光沢保持率 ≥ 80% |
光沢保持率 ≥ 40% 白亜化等級 0〜2 |
上塗り塗料3級 |
照射500時間 光沢保持率 ≥ 70% |
光沢保持率 ≥ 30% 白亜化等級 0〜3 |
※A種とB種で、耐候性の基準は同じ。屋外暴露耐候性の結果が得られた後の促進耐候性条件は省略。
これ以外の品質については、1~3級共通で定められています。
詳細は冒頭に紹介した規格書を確認してください。
主な製品
JIS K 5659 に該当する主な製品は下記の通りです。
※ 主に認証品を記載していますが、一部相当品やJIS表示停止中のものが含まれる場合があります。必ず個別ページ及びメーカー情報をご確認下さい。
※ ここに記載しているB種はいずれも相当品となります。
その他、おそらくトウペも適合品をラインナップしているものと思われますが、十分な情報が得られておりません。ダルト#1000などカタログ等を確認できましたら掲載いたします。
塗装仕様
主に、DP塗装と呼ばれる仕様でJIS K 5659 が必要とされます。
公共建築工事標準仕様書(建築工事編)および 公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)では、鉄鋼面や亜鉛めっき鋼面の耐候性塗料塗り(DP)について、JIS K 5659を明記した塗装仕様が定められています。
詳細は以下の仕様書を参照ください。直接該当ページへとリンクしています。
- 公共建築工事標準仕様書 建築工事編(令和7年版)
18.7.2 鉄鋼面の耐候性塗料塗り
18.7.3 亜鉛めっき鋼面の耐候性塗料塗り
- 公共建築改修工事標準仕様書 建築工事編(令和7年版)
余談①:JIS K 5658との違いなど
JIS K 5658の塗料と、JIS K 5659のA種上塗り塗料は、やや似た系統のものが多いです。
同じJASS18の塗装略号を当てる場があったり、メーカーによっては似た品名をつけるものもあり、
品質規格も一部は共通しており、混同しないように注意が必要です。
ただし品質規格については項目はJIS K 5659が項目数が多く、屋外暴露など内容もやや厳しいようです。
ただ、促進耐候性の時間のみはJIS K 5658の方がちょっと厳しい条件です。
また、現時点ではJIS K 5658:2010よりJIS K 5659:2018の方が新しく、
直近の改正で水性を具体的に規定してあったりします。
JIS K 5659は、中塗り塗料が規定されているのも大きな違いです。
JIS K 5658は表題に「上塗り塗料」とあるため、中塗り塗料が規定されていません。
そのため、公共工事の仕様書ではJASS18の中塗り(M-403、M-404、M-405)と組み合わせて使うこととなっています。
メーカーや製品もJIS K 5658よりもJIS K 5659が多いです。
JIS K 5658はコンクリートやECPに用いるため、用途により塗装しない建造物が存在することに対し、
JIS K 5659は鋼構造物用であり、基本的に全て防食塗装が必要となるため、需要、市場が大きいためでしょうか。
余談②:JASS18の塗装略号との関連
塗料の品質規格とはちょっと違うのですが、JASS18に定められた塗装略号というものがあります。
JIS K 5659(またはJIS K 5658)と同じような場面で出てくるものに、下記があります。
JASS18 塗装略号 | 名称 |
---|---|
2-FUE | 常温乾燥形ふっ素樹脂エナメル塗り |
2-ASE | アクリルシリコン樹脂エナメル塗り |
2-UE | 2液形ポリウレタンエナメル塗り |
LS2-FUE | 弱溶剤2液形アクリルシリコン樹脂エナメル塗り |
LS2-ASE | 弱溶剤2液形アクリルシリコン樹脂エナメル塗り |
LS2-UE | 弱溶剤系2液形ポリウレタンエナメル塗り |
LSがつく物が弱溶剤型、FUEがフッ素樹脂エナメル、ASEがアクリルシリコン樹脂エナメル、UEがポリウレタンエナメル塗りとわかります。
そのため、例えば「JIS K 5659 1種であれば2-FUEかLS2-FUEだな」……と確実に判断できれば楽なのですが、これも厳密に1:1対応するようなものではありません。
塗装の種別を表すものなので、実務上はほぼ同じと考えてもそれほど間違っておらず、同じ塗料でJIS K 5659 1種=2-FUEという場合は多いですが、そう明記されない場合もあります。
この塗装略号が出てきた場合には、必ずカタログやメーカーに確認が必要です。
免責事項
この記事は記者の調査または経験に基づき、その内容には正確を期しておりますが、
購入や採用などの判断を行う場合は、必ず各規格書及び塗装仕様書の原本を確認してください。
また、「ここ間違ってるよ」「このような塗装仕様でも使うよ」といったことがあれば、
お気軽にお問い合わせフォームからご指摘ください。。