概要

JIS K 5663は「合成樹脂エマルションペイント及びシーラー」についてのJIS規格で、合成樹脂エマルションペイント、及び主として建築物のコンクリート,セメントモルタルなどの内外装仕上げ塗りの下塗りに使用される合成樹脂エマルションシーラーについての規定です。
2025年8月時点の最新はJIS K 5663:2003であり、詳細な規格の内容は下記をご確認ください。
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- 単品販売(JIS K 5663:2003)(JSA)
- 目次プレビュー(JSA)
- 単品販売(JIS K 5663:2003/追補1:2008)(JSA)
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種類

JIS K 5663は、1種、2種及び合成樹脂エマルションシーラーがあります。

種類 製品リンク
1種 製品一覧を見る
2種 製品一覧を見る
合成樹脂エマルションシーラー 製品一覧を見る

違いとしては、
1種 主として屋外用
2種 主として屋内用
となっており、
品質項目においても、1種は促進耐候性や屋外暴露耐候性が設定されており、2種には設定がありません。
また、耐アルカリ性や耐洗浄性なども1種の方が条件が厳しいものになっています。
唯一、隠ぺい性のみ2種がわずかに厳しくなっています。

合成樹脂エマルションシーラーの品質についても定められていますが、
上塗り適合性という項目があるものの、その他は一般的な塗料についての品質項目であり、
特にシーラー特有の性能を定めたものではないようです。
実際にシーラーに期待される機能は塗料や場面によって様々で多岐にわたるため、
規格として定めるのは困難なのではないかと思います。

また、樹脂種など主原料についても具体的には指定しておらず、
「ホルムアルデヒド系防腐剤,ユリア系樹脂,フェノール系樹脂及びメラミン系樹脂のいずれをも含まないものとする。」
のように、ブラックリスト方式で規定されています。

主な製品

JIS K 5663 に該当する主な製品は下記の通りです。

- 塗料データベース内検索

メーカー 1種 2種 合成樹脂エマルションシーラー
エスケー化研 バイオファイン艶消し
エコフレッシュ
サニービルドEX
水性エコファイン
サニービルドIN SK水性ホワイトシーラー
水性ミラクシーラーエコ
関西ペイント アレスエコクリーンマット
コスモクリーンⅢ
水性セラマイルド 5分つや
ビニデラックス300
ビニデラックス300S
ビニデラックス500S EPシーラー 白
EPシーラー 透明
エコカチオンシーラー
菊水化学工業 水系ファインコート
水系ファインコートEP-Si
水系ファインコートエコ
ビュークリーン
ビュートップEP
キクスイ プライマー スーパーE
キクスイ プライマー スーパーWE
シーカ・ジャパン ダイヤアルテックス#3000
神東塗料 ページ50エコ ラテックスプライマー#1000エコ
スズカファイン AEPクリーン70G
水性モルコン
水性モルコンBIO
AEPクリーン60
AEPモダンSi
AEPモダンBIO
カチオンホワイトBIOシーラー
サミプラホワイトBIOシーラー
AEPクリーンシーラーホワイト
サミプラ
カチオンシーラーEPO
AEPクリーンシーラー透明
サミプラホワイト
カチオンホワイトシーラーEPO
大日本塗料 水性ビルデック艶消
ハイライト#800
ノボクリーン
ノボクリーンビュー艶消
ノボクリーンバイオ艶消
ハイライト#400 マイティーシーラーE白
水性マイティーシミ止めシーラー
水性マイティ―シーラーマルチ
トウペ ウォルテックスハイリッチ トアVフリーシーラー
日本ペイント Hiビニフレッシュセラ
エコフラット70
エコフラット100
Hiビニレックスエコ70
水性ケンエース
オーデコートGエコ
水性ケンエースグロス
エコフラット60 水性透明シーラー
水性ホワイトシーラー
水性カチオンシーラー
水性シミ止めシーラーⅡ
メーコー MK シミ止め
ロックペイント ビニロック(100) ビニロック(55) ロックカチオンシーラーマルチⅢ

塗装仕様・必要とされる場面

主に、公共工事建築仕様書の合成樹脂エマルションペイント塗り (EP)
JIS K 5663が必要とされます。
詳細は以下の仕様書を参照ください。直接該当ページへとリンクしています。

  • 公共建築工事標準仕様書 建築工事編(令和7年版)

  9節 合成樹脂エマルションペイント塗り (EP)

  • 公共建築改修工事標準仕様書 建築工事編(令和7年版)

  10 節 合成樹脂エマルションペイント塗り(EP)

また、建築工事標準仕様書 JASS18 塗装工事 合成樹脂エマルションペイント塗り(EP)
においても指定されています。

 建築工事標準仕様書・同解説: JASS 18 2013 (18) (Amazonアフィリエイトリンク)

「公共建築(改修)工事標準仕様書」と、「建築工事標準仕様書 JASS18 塗装工事」の該当仕様については、
似通った部分はあるものの、細かく見ていくと塗布量などに違いがあるため、
どちらを指定されているかで区別する必要があります。

余談①:屋内用と屋外用

種別の項目では

1種 主として屋外用
2種 主として屋内用

と記載しましたが、実際の製品については、

1種 内外部用
2種 内部専用

のように設定しているメーカーが多いようです。
1種を内部に用いること自体は珍しくなく、基本的に問題ありません。
他方、2種を外部に用いることは問題になる場合があります。
JIS K 5663には規定されている耐候性はもちろんのこと、一般的に内部用塗料は防藻性能などを付与されていないため、外部には不適となります。

逆に、内部専用の塗料は抗菌性能、製品によっては抗ウイルス性能が付与されているなど他の機能を持つ場合があります。
そのため、内外部用塗料は内部にも適用できますが、内部専用塗料が推奨される場合もあります。

個別の製品特性についてはカタログ等をご確認ください。

余談②:つや有塗料がない?

製品リストなどを見ていただければわかる通り、艶有りの塗料が(おそらく)存在しません。
そのほとんどが艶消しであり、一部に5分艶や3分艶があるのみです。

JIS K 5660の品質項目には光沢設定(60度光沢70以上)がある一方、
JIS K 5663の品質項目には光沢の設定がありません。
そのため仕組み上では艶有りの塗料でもJIS K 5663を取得できる……はずですが、
取得している製品は、調べた限り存在しません。

実際には同じ製品名や同じシリーズでも、
艶有り:JIS K 5660 つや有合成樹脂エマルションペイント
艶消し:JIS K 5663 合成樹脂エマルションペイント 1種(または2種)

のように取得している場合も多く、それぞれ別に取得することが一般的なようです。

規格のみを見る限りは、
JIS K 5660 「製品名A-G(つや有)」
JIS K 5663 「製品名A(つや有~艶消)」

のように取得することも出来そうに思うのですが、実際にそうなっていない理由は、
コストなどによるメーカー側の判断や、あるいは慣習的な理由による認証機関側の判断かもしれません。


余談③:シーラーとしての性能とは

種類の項目で、合成樹脂エマルションシーラーの品質について、
「シーラー特有の性能を定めたものではないようです」
と記載しましたが、少し補足します。


下記にJIS K 5500 塗料用語 から抜粋、引用します。
シーラー

素地の多孔性による塗料の過度の吸収や素地からの浸出物による塗膜の劣化などの悪影響が,上層の塗膜に及ぶのを防ぐために用いる素地塗り用の塗料。

つまり「シーラー特有の性能」とは、素地の吸い込み防止や、逆に素地側からの浸出防止です。
これは素材によって多岐にわたるのはもちろん、仮にコンクリートやセメントモルタルに限ったとしても、配合や表面状態によって吸込みの幅が非常に多いことや、浸出についても配合や材料により成分や量が様々であると考えられることから、妥当かつ標準的な試験を設定するのは困難であると考えられます。

シーラーの規格であるにもかかわらず、シーラーとしての性能を定めないのは少し違和感があるものの、実際これを定めるのは非常な困難で現実的でないということかもしれません。

 

免責事項

この記事は記者の調査または経験に基づき、その内容には正確を期しておりますが、
購入や採用などの判断を行う場合は、必ず各規格書及び塗装仕様書の原本を確認してください。
また、「ここ間違ってるよ」「解釈がおかしいよ」といったことがあれば、
お気軽にお問い合わせフォームからご指摘ください。