
JIS K 5669 合成樹脂エマルションパテ
概要
JIS K 5669は「合成樹脂エマルションパテ」についてのJIS規格で、合板,繊維強化セメント板,せっこうボード,モルタル,コンクリートなどの表面を合成樹脂エマルションペイントなどで仕上げる場合の,下地ごしらえに用いる合成樹脂エマルションパテについての規定です。
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種類
JIS K 5669には、下記のような種類があります
| 種類 | 用いる場所での耐水性 | 1回の塗付け膜厚 |
|---|---|---|
| 耐水形薄付け用 | 要求される | 最大0.5mm |
| 耐水形厚付け用 | 要求される | 最大1.5mm |
| 一般形薄付け用 | 要求されない | 最大0.5mm |
| 一般形厚付け用 | 要求されない | 最大1.5mm |
表の通り、耐水性が要求されるかどうか、薄付けか厚付けかで、4種類があります。
品質項目の違いとしては、
硬化乾燥性:薄付け用は5時間以内 厚付け用は24時間以内に硬化乾燥する。
上塗り適合性・付着性:薄付け用は規定有り、厚付け用は規定無し。
耐水性・耐アルカリ性:耐水形には規定有り、一般形には規定無し。
となっています。
ただし、メーカーカタログ等では一般形でも耐水性試験を実施しているなどの場合があり、公表された試験項目から種類を判断することはできません。認証種別の確認が必要です。
そのほか、JIS K 5669の特徴的な品質項目として、「研磨容易性」という項目があります。
これは硬化乾燥したパテが研磨紙で研磨できるかという試験項目で、パテ(下地材)系特有の品質項目となっており、
JIS K 5535 ラッカー系下地塗料
JIS K 5591 油性系下地塗料(廃止?)
などでも同様または類似の試験が定められています。
主な製品
JIS K 5669 に該当する主な製品は下記の通りです。
※ 主に適合品を記載していますが、一部相当品などが含まれている可能性があります。個別ページ及びメーカー情報を必ずご確認下さい。
メーカーは多くない一方で品目は多く、特に一般形薄付け用など、一つのメーカーでも非常に多くの製品がラインナップされています。
塗装仕様・必要とされる場面
主に、公共工事建築仕様書などでJIS K 5669が必要とされます。
詳細は以下の仕様書を参照ください。直接該当ページへとリンクしています。
- 公共建築工事標準仕様書 建築工事編(令和7年版)
18章 塗装工事
2節 素地ごしらえ
18.2.2 木部の素地ごしらえ :耐水形
18.2.5 モルタル面及びせっこうプラスター面の素地ごしらえ :耐水形
18.2.6 コンクリート面、ALCパネル面及び押出成形セメント板面の素地ごしらえ :耐水形
18.2.7 せっこうボード面及びその他ボード面の素地ごしらえ :一般形
4節 合成樹脂調合ペイント塗り (SOP)
18.4.2 木部の合成樹脂調合ペイント塗り :耐水形
8節 つや有合成樹脂エマルションペイント塗り (EP-G)
18.8.3 木部のつや有合成樹脂エマルションペイント塗り :耐水形薄付け用
- 公共建築改修工事標準仕様書 建築工事編(令和7年版)
7章 塗装改修工事
2節 下地調整
7.2.2 木部の下地調整 :耐水形
7.2.5 モルタル面及びせっこうプラスター面の下地調整 :耐水形
7.2.6 コンクリート面、ALCパネル面及び押出成形セメント板面の下地調整 :耐水形
7.2.7 せっこうボード面及びその他ボード面の下地調整 :一般形
3節 素地ごしらえ
7.3.2 木部の素地ごしらえ :耐水形
7.3.5 モルタル面及びせっこうプラスター面の素地ごしらえ :耐水形
7.3.6 コンクリート面、ALCパネル面及び押出成形セメント板面の素地ごしらえ :耐水形
7.3.7 せっこうボード面及びその他ボード面の素地ごしらえ :一般形
5節 合成樹脂調合ペイント塗り(SOP)
7.5.2 木部の合成樹脂調合ペイント塗り :耐水形
9節 つや有合成樹脂エマルションペイント塗り(EP-G)
7.9.3 木部のつや有合成樹脂エマルションペイント塗り :耐水形薄付け用
上記のように指定されています。
素地ごしらえでは、せっこうボードを除き「合成樹脂エマルションパテは、外部に用いない。」とされていることに注意が必要です。
また、JASS18の塗装仕様においても、
セメント系素地及びせっこうボード素地面塗装について、
素地調整EE及びREのパテかい、パテ付け
アクリル樹脂系非水分散形塗料塗り(NADE)
合成樹脂エマルションペイント塗り(EP)
つや有合成樹脂エマルションペイント塗り(EP-G)
ポリウレタンエマルションペイント塗り(UEP):耐水型(原文ママ)
木質系素地面塗装について
合成樹脂調合ペイント塗り(SOP)
合成樹脂エマルションペイント塗り(EP):耐水形薄塗り用(原文ママ)
つや有合成樹脂エマルションペイント塗り(EP-G):耐水形薄塗り用(原文ママ)
上記のような仕様で指定されています。
深堀り:何を上塗りできるのか
JIS K 5669に該当する製品は、品質試験にポットライフや混合の規定がないことからも分かるよう、反応硬化タイプを除く、一液乾燥硬化タイプのパテとなります。また他の記事にも書きましたが、「合成樹脂エマルション」ですので水系。つまり、一液水系パテということになります。
さて、JIS K 5669に対して、どのような上塗りを用いることが適切でしょうか。
というのも、一般的に、メーカー塗装仕様で明示しない限り、一液水系塗料に対しての上塗りには、通常水性塗料が用いられます。また同様に一般的に、パテのような上塗り塗料が他社製品である場合も多い製品については、メーカー塗装仕様は下塗りの時点で終わっており、上塗り適合については明記されない場合も多いです。
実際にJIS K 5669該当品のカタログを見る限り、いわゆる溶剤系の塗料は不可としている製品は一部あるものの、強く水性に限定する記述も多くなく、明確ではありません。
もちろん、個別の製品については必ずメーカーに問い合わせるべきですが、それ以外の情報から考えてみようというのがこの段の趣旨です。深堀りなので。
まず、JIS K 5669の薄付け用の品質規格には「上塗り適合性」があります。
その試験内容はというと、JIS K 5663 合成樹脂エマルションペイントの1級または2級を塗装し、外観異常がないかを確認するものであり、ここで上塗りとしての適合を確認されるのは一般的な水系塗料との相性のみです。
次に、公共建築工事標準仕様書を見てみると、
・屋外の木部やモルタルコンクリートの素地ごしらえでは、合成樹脂エマルションパテを用いない。
→耐候性塗料塗り(DP)、木材保護塗料塗り(WP)除外
・屋内でも木部の透明塗料では素地ごしらえはB種(つまり合成樹脂エマルションパテを使用しない)
→クリヤラッカー塗り(CL)、ウレタン樹脂ワニス塗り(UC)、ピグメントステイン塗り除外
・アクリル樹脂系非水分散形塗料塗り (NAD)では素地ごしらえはB種(合成樹脂エマルションパテを使用しない)
→アクリル樹脂系非水分散形塗料塗り(NAD)除外
・せっこうボード素地ごしらえでは、屋外及び水回り部の場合、合成樹脂エマルションパテは、上に塗り重ねる塗料の製造所の指定するものとする。
→せっこうボード屋外の塗装仕様例示なし
となり、示されている中で合成樹脂エマルションパテの上に塗装をするのは
・合成樹脂エマルションペイント(EP)
・つや有合成樹脂エマルションペイント(EP-G)
・合成樹脂調合ペイント塗り(SOP)
の3仕様であり、実際に合成樹脂エマルションパテの次工程で塗装するのは
・JIS K 5663 合成樹脂エマルションシーラー
・JIS K 5660 つや有合成樹脂エマルションペイント
・JIS K 5516 合成樹脂調合ペイント 1 種
の3種類です。
この中で気になるのはやはり、JIS K 5516 合成樹脂調合ペイント 1 種です。
JIS K 5516はいわゆる油性塗料であり、実質的に弱溶剤系に分類されます。
JIS K 5516 合成樹脂調合ペイント 1 種が記載されているのは合成樹脂調合ペイント塗り(SOP)であり、
そこで指定されているパテは耐水形、つまりJIS K 5669 耐水形薄付け用と耐水形厚付け用です。
このことから、
「公共建築工事標準仕様書によれば、JIS K 5669 耐水形薄付け用と耐水形厚付け用は、水系塗料のみならず、JIS K 5516 合成樹脂調合ペイント 1 種程度の弱溶剤系塗料の上塗りは想定されている可能性が高い」
……と考察しますが、個人的な感覚からすれば特に厚付けはやや怖い気もするので、
個別の製品については必ずメーカーに問い合わせてください
また、同様に建築工事標準仕様書JASS 18においても前項に示した通りの仕様で指定されており、そのうち二つ、
・合成樹脂調合ペイント塗り(SOP)
・アクリル樹脂系非水分散形塗料塗り(NADE)
が弱溶剤系となります。
そして、この二つの仕様では一般形/耐水形とも薄/厚付け用とも記載されていないため、
「建築工事標準仕様書によれば、JIS K 5669 合成樹脂エマルションパテは、水系塗料のみならず、JIS K 5516 合成樹脂調合ペイント 1 種やJIS K 5670 アクリル樹脂系非水分散形塗料程度の弱溶剤系塗料の上塗りは想定されている可能性が高い」
ということになろうかと思います。
新規のNAD塗装に対し、公共建築工事標準仕様書と建築工事標準仕様書で適/不適が変わるのがちょっと面白いですね。
なお、公共建築改修工事標準仕様書においては、NAD塗装の下地調整としてJIS K 5669の適用も可能のようです。
なかなか入り組んでいます。
免責事項
この記事は記者の調査または経験に基づき、その内容には正確を期しておりますが、
購入や採用などの判断を行う場合は、必ず各規格書及び塗装仕様書の原本を確認してください。
また、「ここ間違ってるよ」「このような塗装仕様でも使うよ」といったことがあれば、
お気軽にお問い合わせフォームからご指摘ください。
公開日 2025/10/25
最終更新2025/10/27
