
JIS K 5670 アクリル樹脂系非水分散形塗料
概要
JIS K 5670は「アクリル樹脂系非水分散形塗料」についてのJIS規格で、主として建築物のコンクリート面やセメント・モルタル面,プレキャストコンクリート,押出し成形板などの塗装に使用するアクリル樹脂系非水分散形ワニスを用いた塗料についての規定です。
2025年10月時点の最新はJIS K 5670:2021であり、詳細な規格の内容は下記をご確認ください。
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- 単品販売(JIS K 5670:2003 )(JSA)
- 単品販売(JIS K 5670:2003/AMENDMENT 1:2008 追補1)(JSA)
- 単品販売(JIS K 5670:2003/AMENDMENT 1:2021 追補2)(JSA)
種類
JIS K 5670 アクリル樹脂系非水分散形塗料の種類は一つのみです。
また、品質項目も
・容器の中での状態
・塗装作業性
・塗膜の外観
・乾燥時間(半硬化乾燥)
・隠ぺい率
・耐水性
・耐アルカリ性
・促進耐候性
と、非常に一般的な試験となっており、隠ぺい率があることから、エナメル塗料であることがわかります。
ある塗装仕様と見比べると一つ気になるところが出てくるのですが、これについては深堀り②の項で述べます。
主な製品
JIS K 5670 に該当する主な製品は下記の通りです。
※ 主に適合品を記載していますが、一部相当品などが含まれている可能性があります。個別ページ及びメーカー情報を必ずご確認下さい。
メーカーも製品もあまり多くありませんが、外装系のメーカーはラインナップしているようです。
塗装仕様・必要とされる場面
主に、公共工事建築仕様書などでJIS K 5670が必要とされます。
詳細は以下の仕様書を参照ください。直接該当ページへとリンクしています。
- 公共建築工事標準仕様書 建築工事編(令和7年版)
18章 塗装工事
6節 アクリル樹脂系非水分散形塗料塗り (NAD)
18.6.2 アクリル樹脂系非水分散形塗料塗り
- 公共建築改修工事標準仕様書 建築工事編(令和7年版)
7章 塗装改修工事
7節 アクリル樹脂系非水分散形塗料塗り(NAD)
7.7.2 アクリル樹脂系非水分散形塗料塗り
上記のように指定されています。
適用範囲はいずれも、屋内のコンクリート面、モルタル面等とされています。
また、建築工事標準仕様書 JASS18 の塗装仕様においても、
セメント系素地及びせっこうボード素地面塗装について、
アクリル樹脂系非水分散形塗料塗り(NADE)
A種(計3回塗り)
B種(計2回塗り)
と定められています。
こちらの適用範囲は建築物の内・外部の壁面に平滑仕上げを目的とした とされています。
深堀り①:「アクリル樹脂系非水分散形塗料」と「NAD塗料」
JIS K 5670の名称は、アクリル樹脂系非水分散形塗料となっており、
一方、それを使用する塗装仕様は、前項で紹介した通り、
公共建築工事標準仕様書:アクリル樹脂系非水分散形塗料塗り(NAD)
建築工事標準仕様書:アクリル樹脂系非水分散形塗料塗り(NADE)※Eはエナメル
となっています。
また、NAD塗料という名称は遅くとも1970年代から存在し、これはJIS K 5670が定められた2003年よりもはるか以前です。 現在でも塗料名に「NAD」という名称が使われる場合があります。
NADとは何かというと(Non Aqueous Dispersion/非水分散形)の略で、これは塗料中の樹脂の状態や性質を表し、樹脂が溶剤に溶解しているのではなく、分散していることを示します。
JIS K 5670は、NAD形塗料の一種であり、アクリル樹脂系の塗料ということになります。
また、品質に隠ぺい率があることから、エナメル塗料ということになります。
なおNADの定義として「脂肪族炭化水素系(=弱溶剤)に0.1μm~〇μmの樹脂が分散している」という説明もよく目にしますが、JIS K 5670はもちろん、JIS K 5500などにも定義されておらず、この元となる公的な資料などについては探しきれませんでした。
ただし、1975年の色材協会誌 48 巻, 11 号 非水ディスパージョン(NAD)塗料にて
非水ディスパージョン(Non Aqueous Dispersion―以下NADと略す)は,約0.1~0.8ミクロンのポリマー粒子を安定に水以外の有機液体(主として脂肪族炭化水素を主体とする有機溶媒)中に分散させたものであり(以下引用者略)
とあるため、少なくとも50年以上前からの一般的な定義であるようです。また実際にNADと言われる塗料は、知る限り全て弱溶剤系のようです。弱溶剤系とはいえ芳香族が含まれるものも多いため、強溶剤リッチなNADも原理的には可能かもしれませんが、特にメリットがないので作られないだけかもしれません。
深堀り②:屋内用?屋外用?
塗装仕様の項で触れましたが、
公共工事建築仕様書:屋内
建築工事標準仕様書:内外部
と、適用範囲が異なっています。
屋内用塗料、屋外用(または内外部用)塗料に求められる性能の違いはいくつかありますが、なかでも最も代表的なものは耐候性です。
そして、JIS K 5670の品質を見ると、「促進耐候性」が存在します。
ならば外部に用いてもいいのではないか、と思いますが、その試験内容は、キセノン促進耐候性で250時間。
これは一般的な促進倍率(10~20倍)をあてはめると、屋外暴露約3~6ヶ月相当です。 この数字は諸条件によって変わりますのであくまで一例ですが、判定基準も目視のみ(外観異常と白亜化等級)であり、耐候性試験としては最低限の品質のみを確認する水準といえるかもしれません。
一般的にはアクリル樹脂というのは高い耐候性を持つ樹脂であり、こと屋外に用いる塗料分野では、塗膜が晒される条件が厳しく、アクリルを外部に用いることは可能であるものの、それ以上に高い耐候性を持つ樹脂系(ウレタン、シリコン、フッ素など)が多くあるため、公共工事建築仕様書では屋内用としているのかもしれません。
深堀り③:アクリル樹脂系以外のNAD塗料
ところで、アクリル樹脂系非水分散形塗料塗りの略号がNAD(NADE)であることについて違和感がないでしょうか。NAD自体にはアクリル樹脂系という意味は全く含まれないのに、塗装略号のNADはアクリル樹脂系のみを指しています。
アクリル樹脂系以外のNAD塗料塗りがあるとすれば、それをどう呼べばよいのか、という疑問が湧いてきます。
記者として私が思いつく理由としては
・塗装記号としてのNAD自体があまり高グレードを示さないため、NADをアピールする理由が薄い
例えば高耐候性の塗装記号DP塗装にもNAD塗料が使われたりしますが、その場合はDPと言えばいいのでNADという名称は使わない。
・アクリル樹脂系以外のNAD塗料は存在するが、非アクリルとまでは言えない。
NAD系ウレタン、NAD系シリコン、NAD系フッ素、いずれも存在します。
しかし、多くはアクリル成分も含まれるため、アクリル樹脂系NAD塗料と厳密に区別する必要がない。
などが思い浮かびますが、どうでしょうか。
免責事項
この記事は記者の調査または経験に基づき、その内容には正確を期しておりますが、
購入や採用などの判断を行う場合は、必ず各規格書及び塗装仕様書の原本を確認してください。
また、「ここ間違ってるよ」「このような塗装仕様でも使うよ」といったことがあれば、
お気軽にお問い合わせフォームからご指摘ください。
公開日 2025/11/2
最終更新2025/11/2
