JIS K 5675 屋根用高日射反射率塗料

概要

JIS K 5675は「屋根用高日射反射率塗料」についてのJIS規格で、建築物の屋根及び屋上の塗装に用いる自然乾燥形エナメル系の屋根用高日射反射率塗料についての規定です。
2025年11月時点の最新はJIS K 5675:2011であり、詳細な規格の内容は下記をご確認ください。
- JISハンドブック 30 塗料 (2025) (Amazonアフィリエイトリンク)
- 単品販売(JIS K 5675:2011)(JSA)
- 正誤表(JSA)
- 目次プレビュー(JSA)

種類

JIS K 5675には、下記のような種類があります

種類 等級 促進耐候性試験 鏡面光沢度
1種
(水系)
1級 2500時間 70以上
2級 1200時間 70以上
3級 600時間 70以上
LG級 600時間 70未満
2種
(溶剤系)
1級 2500時間 70以上
2級 1200時間 70以上
3級 600時間 70以上
LG級 600時間 70未満

※表では主な違いとして促進耐候性試験の時間を記載していますが、判定基準やほかの項目にも差があり、時間のみで分類されるものではありません。
 ただし、3級より2級、2級より1級の方が高耐候の等級ということはいえます。
 LG級は耐候性にかかわらず「光沢度70未満」という基準で分類されるため、仮に2級や1級相当の耐候性を持っている製品が存在しても、低光沢であればLG級となります。

品質項目としては、
・容器の中の状態
・表面乾燥性(23℃、5℃)
・低温安定性(1種のみ)
・塗膜の外観
・日射反射率
・耐おもり落下性
鏡面光沢度
・耐酸性
・耐アルカリ性
・耐湿潤冷熱繰返し性
・促進耐候性
・付着性
・屋外暴露耐候性

となっており、この規格の特徴は、やはり日射反射率でしょう。
これはJIS K 5602 塗膜の日射反射率の求め方に試験方法が定められています。

この試験法では、
・近紫外及び可視光域 (300nm〜780nm)
・近赤外域 (780nm〜2500nm)
・全波長域 (300nm〜2500nm)
の三つの波長範囲が規定されていますが、JIS K 5675においては、このうち近赤外波長域で測定した日射反射率の品質基準を満たし、また全波長域の数値を報告することとなっています。
なお、求められる日射反射率は、L*値(L*a*b*色空間における明度)によって変わります。明るい色はもともと反射率が高く、一律には設定できないためです。
また、屋外暴露耐候性の判定基準としても近赤外波長域の日射反射率保持率が求められています。

これを非常に簡単に言いなおせば、
・基本的に、太陽光のうち近赤外線をどれだけ反射するかが重要
・暗い色でもある程度反射し、明るい色はさらに反射しなければならない
 (明るい色だと高反射塗料でなくてもある程度反射するため、基準が変わります)
・屋外暴露しても、一定の日射反射率を保っていなければならない

このあたりをもっと具体的専門的に知りたい方は、
下記資料の解説参照を推奨いたします。
建材試験センター 建材試験情報 Vol.48(2012年2月)
ここでは、具体的な品質表も閲覧可能です。

主な製品

JIS K 5675 に該当する主な製品は下記の通りです。

- 塗料データベース内検索

メーカー 1種
1級 2級 3級 LG級
NCK アドクールAqua 5分艶
菊水化学工業 アドマクールペイント
スズカファイン クールトップSiスーパー クールトップUスーパー

1種1級、2種LG級について、2025年11月時点では該当製品が見つかりませんでした。
また、全体的に溶剤系(2種)の方が製品が充実しています。

塗装仕様・必要とされる場面

主要な塗装仕様書
建築工事標準仕様書 JASS18
公共建築工事標準仕様書(建築工事編)
などにおいて、JIS K 5675は記載されていません。

では、特に必要とされる場面はないのか?
というと、全くそんなことはなく、公共工事で仕様として指定されるのは一般的です。

その根拠として、
グリーン購入法第6条に基づく環境物品等の調達の推進に関する基本方針
において、国、独立行政法人及び特殊法人の調達する公共工事の資材特定調達品として下記のように指定されていることがあげられます。

環境物品等の調達の推進に関する基本方針(令和7年1月28日変更閣議決定)
高日射反射率塗料
【判断の基準】

近赤外波長域日射反射率が表に示す数値以上であること。
近赤外波長域の日射反射率保持率の平均が80%以上であること。
備考)
1 本項の判断の基準の対象とする高日射反射率塗料は、日射反射率の高い顔料を含有する塗料であり、建物の屋上・屋根等において、金属面等に塗装を施す工事に使用されるものとする。
2 近赤外波長域日射反射率、明度L*値、日射反射率保持率の測定及び算出方法は、JIS K 5675 による
3 「高日射反射率塗料」については、JIS K 5675に適合する資材は、本基準を満たす。

当然、この基準を満たせばよいので、必ずしもJIS K 5675が必要とまではいえないのですが、現実問題としてほかの性能も考えた時、JIS K 5675認証品、あるいは少なくともJIS K 5675相当品は求められます。

もとより、JIS K 5675品質 非該当かつ上記を満たす塗料を想定すると、
・ほかの性能(例えば耐おもり落下性や耐アルカリ性)が足りない
・日射反射率を満たすが、屋外暴露後の日射反射率が通らない、あるいは未試験

など微妙なラインであり、一般に屋根用の塗料は壁面用より厳しい条件にさらされることから、わざわざ非該当のものを選択する必要がありません。

グリーン購入法はあくまで国の調達方針ではありますが、実際に地方自治体が仕様として指定しているのは、これを基準にしているものと考えられます。

そのほか、UR都市機構においても
環境に配慮した物品などの購入
 令和7年度年度環境物品等の調達の推進を図るための方針
高日射反射率塗料については、人工の地表面の割合の大きい都市化の進んだ地域において、その使用を推進する。
としており、この資料においてはJIS K 5675の明記はないものの、高日射反射率塗料が求められます。

深堀り①:制定の経緯

JIS K 5675 屋根用高日射反射率塗料 は、かなり新しい塗料規格です。
2011年に制定され、それから現在(2025年12月)まで内容変更はありません。
14年前というとと感じる人もいるかもしれませんが、塗料品質のJIS規格は、改定はともかく制定で言えば30年以上前のものがほとんどであるため、かなり新しいと言えるでしょう。

そのため、制定の経緯なども比較的わかりやすいので、時系列にまとめてみました。

2004年(平成16年)

3月30日 環境省 ヒートアイランド対策大綱 策定

2005年(平成17年)

2月16日 京都議定書の発効
     地球温暖化防止を目的とした国際条約です。

4月28日 環境省 京都議定書目標達成計画(案)を作成
     環境省が、京都議定書の目標達成の手段の一つとして、
     緑化等ヒートアイランド対策による熱環境改善を通じた都市の低炭素化都市 
     を挙げています。
     ここでは高反射塗料への言及はありませんが、既に製品は存在し、
     自治体を含め実証実験などがすすめられていました。

6月    大阪市ヒートアイランド対策推進計画
     屋上への高反射塗料の採用が、その手段として挙げられています


7月    東京都 ガイドラインを策定
     ヒートアイランド対策ガイドライン(平成17(2005)年7月策定)
     ここで、ヒートアイランド対策として、
     具体的に「屋根面への高反射率塗料の適用」が言及されています。
     また、高反射率塗料:21製品を対象とした比較試験や、
     メーカー5社武蔵工業大学を含む共同実験が報告されています。

この時点で既に高反射塗料は非常に多く普及し、その定義についても国の助成対象や自治体独自に定めてはいたものの、どうやら統一的な定義はなく、混乱があったようです。
原因の一つとして、まず試験方法からして定まっていなかったことが挙げられます。このことは、日塗検ニュース 2009の記述からも裏付けられます。

2008年(平成20年)

9月20日 JIS K 5602 塗膜の日射反射率の求め方 制定
     JIS K 5675でも採用されている「日射反射率」がJISにて定められました。
     このことにより、以降の日射反射率の定義が明確になります。
     ただし、この段階でも合格基準などは定められていません。

2009年(平成21年)

12月10日 JPMS 27 耐候性屋根用塗料 制定
      日本塗料工業会規格として、塗料の規格が制定されました。
      「耐候性塗料」の規格ではありますが、
      2種にはJIS K 5602 日射反射率による値が品質に含まれ、
      ここで明確に高反射塗料が定義されたと言えるでしょう。

この規格票では制定の趣旨、制定の経緯についても触れられており、
今回 JPMS 27 を制定することになったのは,ヒートアイランド対策が一日も早く実施されるために日射反射率の高い塗料製品を使用者,消費者の理解を得て普及を進めたいとの意図から,この規格を制定した。
と明記されており、高反射塗料規格とヒートアイランド対策の密接な関わりが見て取れます。

2011年(平成23年)

7月    高日射反射率塗料について
     日本塗料工業会の資料です。ここでは、
     ・高日射反射率塗料とは、太陽光に含まれる(中略)
      一般的には遮熱塗料と呼ばれることもあります。
     ・ヒートアイランド効果のほか、省エネ効果について言及されている
     などが読み取れます。この二点は、深堀り②で詳細を解説します。
     なお、この資料時点ではJIS K 5675は制定されていなかったようです。

7月20日 JIS K 5675 屋根用高日射反射率塗料 制定
     上記の経緯を経て、製品規格が定まりました。

2012年(平成24年)

2月    環境省 環境物品等の調達の推進に関する基本方針
     グリーン購入法の特定調達品目として、JIS K 5675が明記されます。
     このことにより、各自治体の独自基準でなく、
     JIS K 5675が指定される根拠ができたと言えるでしょう。

深堀り②:遮熱塗料(屋根用)とは

遮熱塗料(屋根用)

さて。

屋根用高反射率塗料と似たものとして、遮熱塗料(屋根用)という基準があります。
これは日本塗料工業会が2018年から開始した自主管理の基準であり、
日本塗料工業会が塗料(塗装)の遮熱性能を審査し、合格した製品にマークを表示するものです。

登録商品は下記の通り公開されています。
遮熱塗料(屋根用)自主管理 登録商品リスト
リストを見ると、JIS K 5675認証品もそうでないものも混在しています。

高日射反射率塗料との違い 概要

これは高日射反射率塗料と何が違うのか?
結論から言えば、範囲、主目的、試験方法が異なります。しかし共通する部分もあります。

日本塗料工業会ウェブサイト
遮熱塗料(屋根用)自主管理
遮熱塗料の遮熱性能基準とその表示統一化について
の<背景><目的>の記載を、少し長いですが全文引用します。

<背景>
高日射反射率塗料(遮熱塗料)は発売から20年以上経過しました。近年では出荷量として1万4千トン程度であり、建築塗料出荷量全体に対する遮熱塗料の比率は3%程度です。
また、平成28年度製造基盤技術実態等調査「都市部における遮熱対策・技術と化学産業の貢献可能性に関する調査」(経産省)では、一般消費者の遮熱塗料に対する認知度が低く、その理屈や省エネ効果が分かりにくいという結果でした。
一方で、市場では日射反射やそれ以外の遮熱機能の広告が氾濫し、それが行き過ぎたことにより、逆に一般消費者や建築業界に不信感を抱かせる結果となってしまいました。
このような状況の中、2017年11月にJIS K 5603「塗膜の熱性能-熱流計測法による日射吸収率の求め方」が制定されたことにより、ここで求められる日射侵入比を使うことで日射反射機能以外の断熱、放射などの様々な遮熱機能に関わらず、日射によって塗膜に発生する熱量のうち、内側に通過する熱量として、塗膜の遮熱性能を横並びで比較評価できるようになりました。

<目的>
この業界基準に基づき遮熱塗料の遮熱性能を正当に評価し、その性能を分かり易く表示することにより、一般消費者に遮熱機能の理解を得ることで、遮熱塗料の認知度向上と更なる普及を目的としています。

高日射反射率塗料との違い 詳細

①範囲

冒頭に「高日射反射率塗料(遮熱塗料)」と書いてある通り、この二つは基本的には同じものとして扱っています。しかし本文をよく読むと、明らかに範囲が違うものとして扱っています。

要約すると、
日射反射以外(断熱や放射)の遮熱性能であっても、JIS K 5603による日射吸収率により横並びで比較でき、遮熱塗料であると言える。
ということになり、様々なタイプの遮熱性能のある遮熱塗料の中に、遮熱性能のある高日射反射率塗料が含まれるという説明になります。

②主目的

深堀り①経緯でまとめた通り、
JIS K 5602 塗膜の日射反射率の求め方
JPMS 27 耐候性屋根用塗料
JIS K 5675 高日射反射率塗料
全て、ヒートアイランド対策(地球温暖化対策)として定められたものです。

一方、遮熱塗料(屋根用)の背景では、そのような言葉は登場せず、
一般消費者省エネ効果を主眼としていることが読み取れます。

もちろん地球温暖化対策省エネは関連する項目ではありますが、必ずしも一致するとは限りません。
例えば、放熱性能のみで遮熱した場合、省エネは達成できますが、日射反射と比較すればヒートアイランド対策としては弱くなります。

③試験方法

標準的な試験方法が異なります。
JIS K 5603 塗膜の熱性能-熱流計測法による日射吸収率の求め方
を使用します。
これはJPMS 29を基にした試験規格で、JIS K 5602はもちろん、JIS K 5675よりもさらに新しいものです。
説明にある通り、この規格の日射侵入比を遮熱性能の判断基準とします。

この基準では、日射反射機能があれば日射侵入比も低くなるのは当然として、日射反射機能がなくても、強い断熱や、蓄熱と放熱などのメカニズムで内部に熱を通さなければ、遮熱性能があるといえることになります。

高日射反射率塗料との違い 結論

以上の内容から、遮熱塗料(屋根用)とは、
「高日射反射率塗料以外でも、遮熱性能があれば認められる、省エネ用の塗料」
であり、日射反射機能が低くても一般消費者に対して省エネ性能をPRできる、業界として幅広い遮熱塗料を受け入れることを可能にした、柔軟な基準・制度と言えるでしょう。

そのように読みとれます。素直に読む限りは。

高日射反射率塗料との違い 裏読み

注意:以降は、特に考察がメインとなります。あくまで記者のいち解釈としてお読み下さい。

さて、ここまでの公式資料だけを読むと、
「遮熱塗料(屋根用)自主管理は、日射反射以外(断熱・放射など)の遮熱メカニズムも公平に認める、非常にオープンで柔軟な制度」
という印象を受けます。

ところが、2025年版の遮熱塗料(屋根用)リーフレットを開くと、印象がガラッと変わります。

  • 表紙に「ヒートアイランド対策」「地球温暖化防止」が大きく復活
  • 「太陽光の下では日射反射機能が最も効果的」と繰り返し強調
  • 断熱・放熱機能は工業などの「特殊用途向け」とし、
    屋根用としては日射反射機能を前提としている


このパンフレットを読むと、先ほどの解釈
「遮熱塗料(屋根用)自主管理は、日射反射以外(断熱・放射など)の遮熱メカニズムも公平に認める、非常にオープンで柔軟な制度」
とは、むしろ逆に近い印象を受けます。つまり、
「日射反射以外のメカニズムも受け入れるが、実際に横並びで測定したら、やっぱり日射反射の優位性が明らかになるだけだろう」
というような。

もう少し極端に言えば、
「断熱や放熱もリングに上げてあげるから、公平に測定してみよう。さあ!」
という、ちょっとした挑戦状的なニュアンスすら感じます。

これはあくまで記者の深読みですし、あるいは濃色の日射反射塗料において、断熱や放熱を補助的に使うということも想定できます。

ただ、背景や目的と、実際のパンフレットのニュアンスのズレに、建前と本音のようなものが見えた気がしました。以上。

免責事項

この記事は記者の調査または経験に基づき、その内容には正確を期しておりますが、
購入や採用などの判断を行う場合は、必ず各規格書及び塗装仕様書の原本を確認してください。
また、「ここ間違ってるよ」「このような塗装仕様でも使うよ」といったことがあれば、
お気軽にお問い合わせフォームからご指摘ください。

公開日 2025/12/1
最終更新2025/12/1